秋、さわやかな日差しに包まれて。

 ――――――ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピピッ、ピピピ………………



 聞き慣れたアラームの音に、わたしは目を覚ました。



 なんだか、ずいぶん懐かしい夢を見た気がする。


 二年前―――――――――まだ、あの子がわたしの横にいた頃の夢だ。




「はぁ………………」




 あの夏とは、もうかなり変わってしまった。



 アオちゃんは次の春、坂の上のお家から引っ越してしまったし。


 あの子は次の夏にいなくなってしまった。


 わたしは次の秋、首を吊るなんて真似をして。


 そしてその次の冬に――――――わたしは夢を見つけた。




「小説家になる」という夢はまだまだ遠くて、わたしなんかが出来る訳ないって諦めてしまいそうになるけど。


 それでも、机の上にあるあの子のパソコンを見るたび、もうちょっと頑張ってみようかな、って気持ちになれる。








 むくり、とベットから体を起こせば、心地よい秋の光が目に入り、わたしは少し目を細めた。




「あっ、ユズちゃんからメール………」



 今の高校に転入してからの友達、里見さとみ ゆずりはちゃん。

 人付き合いに慣れないわたしに、声をかけてくれた大事な友達だ。



『さっく〜、今日ヒマ?予定空いてたらウチん家でタコパしよ〜!おやつとかも持って来てね!』






「タコパ、って………………もう、ユズちゃんはいつも突然なんだから………」



 急なお誘いに悪態をつきつつも、服を着替えて準備をする。


 ………………そういえば、二年の前のあの日もこうして準備してたんだっけ。





「おやつ、かぁ…………………何がいいかな」



 何か、良いものはあったかな……………………


 そうだ、あの抹茶味のチョコレート、あれを持って行こう。



「ふふっ」



 楽しいパーティーになりそうだな、と思うと、知らず口元がほころぶ。










 朝の光のなか。


 そよ風にさらわれて、楓の葉が一枚、はらりと宙を舞っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夏とあの子ととチョコと抹茶と 霜月 アカリ @s-akari

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ