旅の始まり、アゲイン!!
『「ソーズ」の才は無いけど、「マジック」の才はあるぅ!?』
ステラの言うことを、そのまま復唱してしまった。
だってそんなの、聞いてない!
ゆっくりとうなずくステラは、苦い顔だ。
「人は自然の力を借りて『マジック』を使う。僕の『マジック』は、『星』の力なんだ」
『星……ステラが、毎日見ていた』
「うん。毎日星と話していたら……いつの間にか、使えるようになっていて」
それってすごくない!?
だってマジックは、「修行すれば使えるようになる」って言ってた。
でも逆に言えば、「修行をしないと使えない」ってことでもある。
それを「いつの間にか」って! ソーズと同じ、立派な才じゃん。
『どうして言ってくれなかったのよ』
「だって……『ソーズを練習してみんなを見返そう』って言葉にも、一理あると思って」
うっ。確かにそう言ったのは私だ。
言い出すタイミングなんてなかったね。
それに、とステラは言葉を続ける。
「マジックの才なんてあっても、仕方ないから」
!!
なんて悲しそうな顔。
そっか。家に必要とされているのはソーズ。国の人だって、マジックよりソーズを尊重してる。
でも……でもでもでも!!
『私はスゴイって思ったよ!!』
「え?」
正直に、思ったことを伝える。
だって私の世界にはマジックなんて無い。むしろ剣を振るうだけって言うなら、ソーズの方がどうってことないよ。目の前のデビルベアを逃がしちゃうなんて力の方が珍しいんだ。
ステラは、すごい。
『じゃあこうしよう。マジックの才があるって言うなら、そっちを伸ばすの!!』
「え、えぇぇ!? ソーズの話は」
『それはもうナシ! 知らない!』
夜の森に、ステラの素っ頓狂な声が上がる。デビルベア来ちゃうよ、しーっ。
『修行して、得意なマジックをもっと大きいものにしようよ。それこそ、誰もバカになんてできないくらい。ソーズよりものすごく強く! それで家をギャフンって言わせよ。ううん、ぐうの音も言わせないんだから!!』
「な、何か目的変わってない?」
細かいことはいいのっ!!
それにこれは、ステラのためだけじゃないんだ。私のため。だって私はさっき……デビルベアを切るのを「怖い」と思った。ステラと同じに。
剣なのに、変だよね。
でもイヤなんだ。「もう私を使ってほしくない」と思うくらいには。
私のこぼした言葉に、ステラは黙りこんだ。
たぶん、共感してくれているんだと思う。
「うん……そうだね。僕も、剣の中に君が入ったから、ますます使いたくなくなった」
『モンスターを切る以外なら役に立つよ! そうだなぁ……料理で野菜を切る時とか!!』
「いやいや切りづらいって」
ふ、とステラが笑った。
ずっと困ったような顔とか、弱弱しい笑顔しか見てなかったから嬉しいかも……って何考えてるんだ私!!
いや、うれしいと思うのは当たり前か、うん。一緒に旅する仲間が笑顔のほうがいいもんね。絶対そう!!
「マジックを伸ばす方が、僕も希望が持てるよ。だから、賛成」
『よし!!』
新しい目標が決まったね!
元の世界へ戻る方法を探す。そしてステラのマジックを伸ばす。うーん、ワクワクしてきた!!
期待に胸をふくらませて、私は口にする。
『二人の旅、改めてはじまりだ~!!』
剣(=私)は絶対使わない!! 冬原水稀 @miz-kak
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