#26 脱コメディルート
学校に着き、いつもと同じように下駄箱からもミヤビちゃんと並んで歩いて教室まで行き自分の席に着くと、いちど自分の席に荷物を置いたミヤビちゃんが俺の席まで水筒を持ってきて、「今日の分」と言って机の上に置いたので「ありがとう」とお礼を言って自分のバッグにしまうと、ミヤビちゃんは普段のクールな表情のまま自分の席に戻って行った。
2学期に入ってから、俺を取り巻く環境が目まぐるしく変化してて、自分でも何をどうしたいのか、よく分からなくなってきていた。
高校入学以降、ヒーローに成り上がることを目指して特殊スキルの特訓を続け、夏休み中にはほぼ物に出来た。
そして2学期に入って早々ランちゃんとミヤビちゃんと友達となり、一緒に登下校するようになった。
そんな中で、俺のダイエット問題が勃発し、その流れでミヤビちゃんの変態的性癖が露見し、それをなんとか治してあげたいと思い、俺はダイエットを決意した。
だが、ミヤビちゃんの性癖を治すどころか、超スパルタ&激マズ野菜ジュース地獄が始まり俺は1日でダウンしてしまい、自宅までミヤビちゃんが心配して来てくれたが、俺の妄想ノートを強奪されてしまい、俺の中学時代の黒歴史を余すことなく知られてしまった。
そして、ミヤビちゃんは「次回作も期待」と言っている。
おかしいな。
まるでコメディじゃないか。
このままだと、成り上がれそうにないのだが。
ココからどう巻き返せば良いのだろうか・・・
とりあえず、ダイエットは続けても良いだろう。
ヒーローとして、強靭な肉体やスマートな体は必要だろうし。
問題なのは・・・ミヤビちゃんだ。
彼女は物語の中で言うヒロインみたいな存在で、ことあるごとに俺の世話をしてくれたり、俺のプライベートへズカズカ入って来たりする。
友達欲しかったし、別に良いのだけど・・・なんというか、彼女が居るとどうもコメディルートに引っ張られている気がしてならない。
ラブコメの主人公を目指すのなら、全く問題ないだろう。
むしろ、こんなにもヒロインとして素晴らしい存在は他にはおるまい。
容姿が優れてて、運動も得意で、近所に住んでて、世話好きで、なのにクールで寡黙で独特の感性の持ち主で、これほどキャラが立ってるヒロインはそうは居ないだろう。
だが、俺はラブコメなど目指していない。
俺が目指しているのは、誰からも尊敬されるようなヒーローだ。
因みに、俺のライブラリーにラブコメや恋愛物語は無い。
だから目の前にヒロインが居ても、知識も経験も無い俺には恋愛ストーリーを妄想することも書き記すことも、出来ない。
ミヤビちゃんに次回作を期待されてても、今の特殊スキルは秘密だから書くことは出来ないし、ラブコメは論外だし・・・
◇
この日は平日だが約束していた通り、放課後はダイエットの特訓となった。
ミヤビちゃんと一緒に下校し一旦自宅へ帰ってから着替えると、グローブを持ってミヤビちゃんの家まで迎えに行き、そこから小学校までランニングして、小学校では筋トレメニューを休憩を挟みながら5セット行い、ヘトヘトになった体でキャッチボールの練習も行った。
因みにダイエット言い出しっぺのランちゃんは、ミヤビちゃんから「ランコは来ないで」と何故かシャットアウトされてて、ガールズの練習日以外は俺とミヤビちゃんの二人での特訓となっている。
キャッチボールでは相変わらず上手く出来ずに苦労したが、30分ほどで終了すると、ミヤビちゃんが昨日俺の部屋でしてくれた様に全身のマッサージをしてくれた。
マッサージが終わるとミヤビちゃんは自分の首にかけていたタオルで、いつもの様に俺の汗を拭いてくれた。
その間、ミヤビちゃんの表情を眺めていると、ミヤビちゃんも額に沢山の汗が浮いていることに気が付き、俺も自分が首にかけていたタオルで拭いてあげた。
ミヤビちゃんは、俺の行動に最初は驚いた表情を見せたが、直ぐに「ありがと」と言って、俺が拭いやすい様に目を閉じてじっとしてくれていた。
友達が居なくてずっと一人だったから、友達とのこういう穏やかな時間は好きだ。
土曜日のガールズの練習に参加した後に膝枕してくれた時もそうだが、優しい時間と言えば良いのだろうか。
形容しがたい感情が胸のウチに湧いてくるような、緊張や焦りとは違うドキドキというか。
特訓が終わりミヤビちゃんを家まで送ってから自宅に帰り、シャワーを浴びて夕食を食べて、自室に戻ると勉強机に座り新品のノートを取り出した。
ノートの表紙には『キャッチボールから始める目指せ甲子園』と書いた。但し、本当に甲子園を目指す訳では無く、中には日々ミヤビちゃんと取り組むダイエットに関する記録を書き記すことにした。
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すみません。
多忙につきストック切れましたので、しばらく更新お休みします。
ヒーローになりたくて バネ屋 @baneya0513
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