最強の冒険者編⑨
アレスは街を囲む壁にある正門へとやってきた。
この商業都市グラシアは、この国でも有数の大都市である。盗賊や魔物の脅威から街を守るため、周囲を壁が囲んでおり、街への出入り口は四方にある。
クランハウスや商業地区から最も近いこの正門は街の東側にある。商業都市の名の由来でもある商業地区が近いこの正門は、常に人でごった返している。
アレスはそんな人ごみを抜け、街への出入りを管理している門番のもとへと向かった。
「あれ、アレスさんじゃないっすか。困りますよ街を出るなら並んでもらわないと。」
本来、街の出入りには手続きをする必要がある。これは、盗難品の持ち出しや、違法な物品の持ち込みを検査する意図がある。
「緊急の依頼なんだ。手続きはなしで頼む。」
「緊急の依頼ってことは、ドラゴンの件ですかい。」
「耳が早いな、もう知ってるのか。」
「そもそも、ドラゴンの被害にあった冒険者が最初に来る場所はここでしょ。」
「それもそうか。」
「すでに街を出る人たちへの警告もしてあります。ドラゴンを恐れて街を出られない商人もいる。あんたが言ってくれるなら安心っす。」
「わかった。すぐに出られるようにしてくれ、手続きを待っていたら時間がかかりすぎる。」
「もちろんです。すぐに通ってもらってかまわないです。」
「助かる。」
そう言ってアレスは正門を通り、東の森へ向けて走り出す。通常、急ぐなら馬を使った方が早いのだが、アレスはスキルの効果で身体能力が上がっているため、今回のように急を要する場合は走った方が速いのだ。
東の森は、街から30キロほど先にある大森林だ。
この森は大きく、グラシアから北東の方角の隣町のズルグまでにある森で、さらにグラシアの街から見て東のほうへと森が広がっている。
ちなみに、アレスの住むライレッド王国は大陸の西に位置し、商業都市グラシアはそのライレッド王国の中でも東の方に位置する。広大な東の森を抜けた先をしばらく進むと他国の領地になる。
東の森はその巨大な森の恩恵か作物が育ちやすく、浅い所は魔獣も滅多に出ない。その恩恵を受けるため多くの村が森の周りや内部に存在している。
森の東の奥地の方に行けば行くほど魔獣が多くなり、その強さも上がっていくが、村は浅いところにしかないため、わざわざ奥地へと近づかなければ危険はさほどない。
森の中心には大きな山があり、そこにドラゴンが住んでいるという情報もあるが、今までそこからドラゴンが出てきたことはほとんどない。だが、ズルグの街から護衛をしていた冒険者が見たということは、ドラゴンは森の浅いところに出たということだ。
ドラゴンに襲われれば周辺の村などひとたまりもない。
すでに被害が出ている村もあるだろう。
これ以上、被害を出さないためにアレスは全力で走り、すでに森のすぐ近くまで来ていた。
そして、アレスが森に入りかけたとき、近くから女の子と思われる悲鳴が聞こえてきた。
――――――――――――――――――――――
9話です。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
もしこの作品がよかったなと思っていただけたらフォローや☆などしていただけると作者のモチベにつながります。
転生して10年、気づいたら最強のクランのマスターになっていた。 しなとす @sinatos
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生して10年、気づいたら最強のクランのマスターになっていた。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます