特別話 新たなる出会いの予感

 ロウソクの騎士団とそれを率いた男との決着をつけてしばらくたった。今、ラナ達はメテットが探している“夜明け”に関する情報を得る為、ラナの父の研究資料を回収する旅をしていた。


 今は丁度10個目の隠れ家の中にラナ達はいた。


「大分集まってきたんじゃない?」


「ええ。残りの隠れ家もあと少しです。メテット、どうですか? 欲しい情報は得られているでしょうか?」


ラナはパラララと流れるように資料をめくるメテットに問いかける。


(あれで本当に読めているんだからすごいなぁ)


「ああ、ヒジョウにタスかる。カルミアもありがとう。カクれガのトビラをアけてくれて」


「わたしが役にたててるなら良かった。ラナ達には迷惑をかけたからどんどん恩を返す所存」


「不思議よね。まさかカルミアが隠し扉を開ける鍵になれるなんて。しかも、今のところ全部カルミアでいけてるし」


「うーん……カルミアはワタシが取り込み、ワタシに宿る父の魔法で眷属化させた存在であるのが要因でしょう」


 ラナは首を傾けながら推測を述べる。


「眷属でかつワタシの半身ともいえるカルミアとワタシがいて開けるように言うので、扉もつい開かざるをえなくなるみたいな感じでしょうか」


(……それ、ダイジョウブなんだろうか)


 後々、大きな不具合が引き起こされないか一瞬心配になったが、メテットは、深く考えないことにした。


(まぁいい。しかし、これは……うん)


 資料を読んで、メテットはシズルに聞くべきことが出来た。


「シズル、1つキきたいことがある。


「? ——?」


「え!? いたんですか!?」


「ほんとに? シズルよりも前に魔物いたの? びっくり」


「ええ。例えば再生する龍とかがいたのよ。でもある時に尻尾斬られてすごい哭いて……遠くに住んでた私にも聞こえるくらいだったわ」


「再生はするけど、痛いのは嫌だったんですね……」


 シズルの言葉に驚愕するラナとカルミア。しかしメテットは淡々と受け入れていた。


「……やっぱり。となると——」


(探していく内に出た仮説が真実味を帯びてきた)


「ただ……うーん」


「メテットが考え込んじゃった……」


「これ、しばらく戻ってこな——」


「——ふむ、ゲンジョウではこれだけだな。マたせた」


「もどってくるの早いですね!? 些か即決に過ぎるのでは!?」


「カンガえるよりコウドウ。これダイジ」


「いや、あの……シズルが……」


 微妙な顔をしたシズルがそこにいた。


「ん、シズル? どうしたそんなカオして」


「いや、まぁいいのよ。別にメテットのことわかってたツラ晒して恥ずかしいとかないのよ」


「?」



————

 資料を読み終え、父の隠れ家を出るラナ達。


「これからどうしますか? ワタシとしてはあの甘そうなお菓子の空間に興味があるのですが……」


「ああ、隠れ家に着く前に見たあのなんか派手な色合いのところね。確かにいろんな意味で面白そうだったわ」


「ラナが行きたいならそこへ。でも、わたしで溶けないかな、あそこ」


「……タシかにトけそうだな。ネツで。……っとさっきからタンチキがハンノ——え?」


「メテット? どうしました?」


「!!? これは!? まさか!!」


「ひゃっ!? な、なんなのよメテット!?」


(シズルの滅多にないかわいい部分が……!)


(ラナ、滅多にないはシズル怒ると思うよ?)


(カルミア!? ワタシの脳内に!?)


 メテットは何かに気づいたようにピンと頭の後ろの探知機を伸ばした。

 まるで、これから死にゆく者の手を掴むように。


「メテット、探知機が逆立っているぞ」


「スコしマってくれカルミア! ……これはキュウナンシンゴウ! バショはウチュウだ!」


「「「ええ!?」」」


「しかも、これは……メテットの……!」


 メテットの顔を見て全てを察するシズル


「! ならとっとと行きなさいメテット! これ護身用に持ってね!」


 シズルは一瞬で大釘を手から抜き出して、メテットに手渡した。


「シズル! でも……」


「急いで! ワタシたちを宇宙に連れていけないか迷っているんでしょう? ワタシたちが生きられるか分からないから」


 ラナがメテットの心配している点を見抜く。

 そしてメテットに先に行くように促す。


「ワタシたちもここで何か出来ないか探してみます。ですからメテットは助けに行ってあげて下さい」


〈これは……メテットの……!〉


(おそらく、助けを読んでいるのは……だとしたら、メテットがあんなに慌てるのもわかる)


 そう考えながらメテットが持っている大釘にそっと触れる。


「考えるより行動、でしょ?」


「ラナ、シズル、カルミア……! ありがとう!」


 メテットは大釘を窓を作り出し、空に向かって行く。



 この時、ラナ達は、


あんな

そんな




 宇宙からの来訪者。未知との出会い。

 そして“黄金の夜明け”の秘密。


 ラナ達の旅に、また一波乱が起こる。






「——悪魔か? しかし少し違うなぁ。ダイコクのモノでもないし。まぁ、」



「悪魔なら、滅ぼさないとね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吸血鬼ラナは旅をする 第0部 〜太陽の種火とロウソクの騎士団〜 貴田 カツヒロ @K_katsuhiro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ