抉る
「君、そうとも言えないのだ。我々がいるこの星よりも確実にこの宇宙の中の星の方が質量が少ない。つまり、重力が小さいのだ。それに比例して時間の流れも重力が小さい程早い。彼らが言う4万年も有り得る話なのだ。」
「そうだ。我々はあなた方と交信する合間、既に何世代もの世代交代を繰り返している。その間我々は様々な知見を得、更なる科学技術の発展を目指し、この様に宇宙の外にあるあなた方と話す事にも成功している。」
「であれば、君たちは私たちに何を語りに来たのだ。」
「我々は次の次元に行く。最後の挨拶に来たのだ。多次元宇宙の果て、そこに我々は新天地を創造した。」
「そのような事が出来るのか。」
「我々は成功させた。これで我々はあなた方のような暴君とはお別れする事が出来る。そのための最後の挨拶として通信したのだ。だが一つやり残したことがある。それを実行させてもらおう。」
「一体何を・・・。」
博士がそう口にした途端、助手の胴体の中央に黒い空間が広がっていったと思うとその瞬間、助手の胴体がごっそりと空間事削り取られていた。
「博・・・。」
助手が何かを言おうとするもののその先の言葉を発する事も出来ずに崩れ落ち、その体から溢れ出る血の池に沈み込む。
「我らの先祖、親友、生命、生態系、全てを破壊尽くしたその罪を罰す。お別れだ。愛しき、そして憎き創造神たちよ。」
彼らの最後の言葉が響くと、段々と極小宇宙は小さく縮小していき、遂には宇宙そのものが消え去ってしまった。
10分にも満たない合間に起こったこの嵐のような出来事は、博士の元に助手の死と研究対象の消失という傷跡を残していった。
報い 斧田 紘尚 @hiroyoki_naoyoki
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