邂逅

「やはりこの極小宇宙に住むものがやっている、という事ですよ。博士。」


「そうだ。全くその通りだ。大変興味深いが、しかし君。これは大変なことだぞ。我々はまさしく未知との遭遇を果たそうとしている。そして彼らの命運を我々が、私達二人が握っている。これが何を意味しているか分かるかね。」


「彼らからしたら、我々はこの宇宙とこの生命を作り出した創造神、ということになりますね。全くもって素晴らしい。」


 博士と助手が談義を重ねる間にもボコボコとガラスカプセル内の真空空間が抉り取られていき暗黒の宇宙空間に呑み込まれていく。


「まったくどうしたものか、このままだとこの装置の中身全体どころか、もしかしたら装置の外ですら吞み込まれてかねない。この宇宙の制御自体が出来なくなってしまう。」


「どうするんですか、博士。停止するんですか。」


 宇宙の進歩という貴重なデータが取れた為、助手はしたり顔をしながら博士の方を向いて伺いを立てる。


「どうするも何も、君。もうこれは装置を停止するしかない。全く何てことをしてくれたんだ。」


 博士は急ぎ足でこの極小宇宙自体の活動を止める為に制御装置へ向うものの、その途上全く聞きなれない言葉が聞こえてくる。


「宇宙を創りし神々よ。もう遅いのだ。我々は次の段階へ進む。」


「だれだ今のは。」


 博士は部屋の中に侵入者があったものと部屋中を見回すものの、そこには自らと助手の二名しか存在しなかった。


「博士、私にも今しがた何者かの声が聞こえました。」


「君も聞こえたか。いったいどこから聞こえたのだ。」


「ここだ。我々はここにいる。この宇宙だ。」


 博士と助手はぎょっとした顔で宇宙の方へ振り返る。


「あなた方が起こした4万年前の厄災は我々の銀河、いや我々の宇宙全体に甚大なる被害を及ぼした。我々の家族、親類、親友、何もかもを無くした者もいた。」


「4万年だと、ありえない。あれはたった数分前の筈だ。そんなに時間が経っている筈がない。」


 宇宙からの声から伝えられた4万年という途方もない年月は助手を大層困惑させ、先程までのしたり顔は既に消えていた。

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