第4話 転生ではなく、ループ
視界に光が入ってくる。
どうやら、今度は死なずに済んだようだ。そして、目をパチリと開くと、目の前には、白い天井がうつしだされた。どうやら、この部屋には、誰もいないようだ。おい、なんでやねん。赤ちゃんから目を離してはいけないって習わんかったんかい。しまった。起きたばかりの変なテンションのせいか、関西弁になってしまった。
ていうか、私はどこに転生したのだろう。漫画や小説なら、異世界転生が定番だけど。でも天井には、
普通に証明器具が取り付けられているから、異世界ではない?待って。この部屋の壁紙、どこかで見たような…
すると部屋の扉が開き、複数の人が入ってくる。
知らない女の人が私の顔を覗き込み、ふわりと笑って、
「貴方の名前が決まったわ。愛よ。貴方の名前は愛
よ。愛に溢れる子に育ちますように。」
と言った。私はその言葉を聞き、笑顔を見て、とても胸が苦しくなった。
そうか、私は転生したのではなく、ループしたのだ。
ああ、この人が私のお母さんなんだ。私は生前、お母さんの顔を見たことがなかった。たしか、私が1歳の頃に事故で亡くなったと聞いていた。
家の使用人とは、そんなことを話さなかったし、父とは母の話以前にあまり話自体しなかった。そして私自身も、父の愛情を求めるばかりにお母さんのことをあまり聞こうともしなかった。
お母さんが私を抱きかかえる。
ああ抱っこって、こんなにあったかくて、優しいモノなんだ。
瞳から涙が溢れ、頬を伝う。すると、お母さんは目を見開き、焦ったように「よしよし」と背中を撫でる。よく見れば、周りにいる使用人も焦ったようにしている。ああ、私はこんなに愛されていたんだ。
ふと、光が射す窓に目を向ければ、木々が生い茂り、爽やかな風がゆっくりと吹いている。部屋の中では、ゆっくりとした時間が過ぎていく。
そんな時間をとても愛おしく感じた。
もう愛は求めませんから! 暁 莉都 @AIKASOU2436
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