始まりをいくつ数えた頃に
長月瓦礫
始まりをいくつ数えた頃に
まずは慈愛を殺した。
躊躇、祈願、悲哀、幻想、希望、楽観、諦念、苦渋、名前のあるものをすべて殺した。
完全にして十全の私になるために、名前のあるものを殺し続けた。
死は終わりと同時に始まりでもある。何かが死ぬたびに、何かが芽生えるのを感じる。
手の中にある刃物で得たものは、すべての始まりだ。
決して壊れない本物の魂、それを誰かが決意と名付けた。
蜘蛛の糸より細く長い通路が続く。天国へ続く道。
地獄の道は天国を知るための道。首なし死体の私が列をなして歩く。
始まりをいくつ数えた頃に、私は本物になれるのだろう。
からっぽに響く糾弾、私が私になるための犠牲、いつ終わるのだろう。
誰にも分からない。
しかし、ナイフを握るこの手は雨の日の傘みたくじっとりと濡れている。
地獄の底へ続く階段を下っていく。
誰かが罪を裁き、罰を与える。
実にくだらない。頭がひっくり返った私は笑う。
偶然と名のついたバケモノが立ちはがかる。
フランケンシュタインが最後の一人、それが偶然だ。
奇跡ゆえに弱い。軌跡ゆえに強い。
だから、偶然を殺す。
始まりをいくつ数えた頃に 長月瓦礫 @debrisbottle00
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