第七回 お出ましは、目立たずこっそりとお願いします

 先日、庭の草が伸びてきたので草むしりをした。

 しかし、暑くなってくると出会いたくない奴と遭遇してしまうのだ。昨年など、家の中で遭遇してしまい、逃げ回った事がある。

 そいつは蜥蜴とかげで、たまにメタリックカラーの奴と出会い「綺麗だな」と思うことがあるが、私が出会うのはほとんど茶系の地味な奴。

 数十年前――職場に蜥蜴が迷い込んできた。

 すぐ逃げるかと思いきや、蜥蜴は居座り続け、動いても数センチ。

 その頃の私は蜥蜴を触れたらしく、むんずと掴まれて庭の葉の上に放った。奴は毛がない割には体温があり、温かかった。

 いやいや……、今の私には天敵である。

 蜥蜴に何かをされたわけではないのだが、見た目でアウト。

 蜥蜴にすれば「そんなことを言われても……」と言うかも知れないが、とにかく見たら後退るか、勇気を出して追い払うかである。

 それが先日、立て続けに二匹お出ましになった。

 一匹は「しっしっ」と追い立てたが、二匹目はボスクラスの大物。

 一体なにを食えば、あんなに肥えるのか。

 お陰で、草むしりは中断になった。

 因みに、蟷螂かまきりも嫌いである。

 何故か、嫌いと言っている私ばかりよく奴らに遭遇する。同居していた父と母は遭遇しなかったらしい。

 蟷螂などは、道を歩いていると頭に張り付かれた事がある。

 コンビニに向かう途中、後頭部に異変を感じて触ると「かさっ」と感触があった。嫌な予感がして払うと、ポトリと大蟷螂が落ちた。

 もう恐怖である。

 さらに、家の中では蜘蛛くもだ。

 米粒ほどなら怖くはないし触れるのだが、たまにてのひらサイズの大蜘蛛がお出ましになる。

 何故か発見してしまうのは私で、亡き両親は私が騒いでから存在に気づくという。

 Gを食べてくるいい奴――とはわかっているのだが、人前には出てこられると、私は泣き叫ぶしかない。蜥蜴と違って近づく事も出来ず、追い出すこともできない。

 一人暮らしとなった現在、夜となり、奴と遭遇しないか戦々恐々の毎日である。

 蜥蜴と蟷螂と大蜘蛛へ。

 お互いの平和にために、お出ましは人目につかぬよう目立たずこっそりとお願いします。

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念じた訳ではないけれど… 斑鳩陽菜 @ikaruga2019

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