下級役人の浩の妻・美雨は、家計を救うために闘鶏で稼ぐハチャメチャぶり。
つつましくも明るい暮らしは、宮廷からの客によって終わりを告げられました。
皇帝の血筋を引いていた美雨。幼い娘と浩とともに、陰謀渦巻く宮殿へ足を踏み入れたのです。手厚いとは言いがたい後ろ盾の中で、身分や男女の壁が険しく立ちふさがります。
人の心を掴む手段は、なんと遊戯――!? しかも、美雨は遊戯好きが高じて、オリジナルの遊戯を作っていたのでした。
おっとりとした美雨とツッコミが冴え渡る浩は、さながら夫婦漫才を見ているかのよう。コメディとシリアスの塩梅が素晴らしい、中華ファンタジー!
大河・龍河が横断する国、黄河国の町で暮らしていた、下っぱ役人の浩と、その妻の美雨。
ある日そんな彼らの元にえらーい将軍様がやってきて、美雨に皇帝なってくれと言ってくる。
実は美雨、本人も知らなかったのですが幼い頃に死んだと思われていた皇族の生き残り。
とは言え庶民暮らしが長く、皇族としての作法なんて知らない彼女に、皇帝なんて勤まるの?
しかし将軍は美雨の、宗教団体の召喚した邪神を倒したとか、魔物を倒して秘宝を手に入れたとか言う、数々の凄い噂を聞いていて、これなら大丈夫と思って迎えに来たのですが。
実はそれら、全部遊戯のお話。美雨はTRPGが大好きな、遊戯マニアだったのです!
そんな美雨に皇帝なんて、やっぱり無理……と思いきや。
その遊戯を活かして様々な改革を行い、本当に大活躍をしてくれるからビックリ。
良き夫浩の支えもあって、立派な皇帝になってくれるのです。
作法なんて知らなくても、庶民の現状を知っている彼女だからこそ、できることがある。
コミカルなキャラクターと相まって、読んでて楽しかったです。
低い身分の者を見下す者や、女性を軽視する男等、差別的な考えを持つ人間がいるのも、本作の特徴。
緩いコメディチックな雰囲気で話が進む中、時折出てくる差別的な考えやそれで嫌な思いをする人達を見ると、物語の中だけの話じゃない。現代社会においても無視してはいけない問題だと、深く考えさせられました。
美雨にはそんな世の中を良くしてくれる、良い皇帝であってほしいです。
本作の舞台となるのは、中華風の異世界。
そこでは、現皇帝をその座から降ろし、新しい人物を皇帝に据えるという計画が進行していました。
その、新しく皇帝になる人というのが、主人公崔浩の妻、美雨だったのです。
家にいきなり大将軍が現れ、実は美雨は皇帝の血筋であること、及び上記の計画を告げられ、そういうわけだからあなたに次の皇帝になってもらいたいと言われるわけなんですよ。
もちろんそんなもの冗談ではありません。
しかしそんな美雨本人の意思も虚しく、結局は皇帝となることに。
礼儀作法も腕っぷしもない美雨。皇帝といっても、そんなものお飾りでしかありません。
と、誰もが思ったことでしょう。しかし、彼女にはある特技がありました。それは、ゲーム!
実は美雨、カードゲーム的なものや、テーブルトークRPGみたいなものを考案していて、庶民の間ではけっこう流行っている様子。
そんなものが皇帝として何の役に立つんだよと突っ込まれる方もいるかもしれませんが、この設定はギャグや酔狂でつけられたものではありません。意外な、しかし納得のいく形で、ピタッと物語に合致し、見事なまでの活躍をするのです。
そんな設定からイメージできる通り、コメディ要素たっぷりな本作ですが、その一方で、シリアス成分もたくさん。
傷つき心をすり減らすようなシーンも書かれ、大丈夫かと心配になることも。
そんな困難を打破するのが、先述のゲームと、それで鍛え上げた美雨の賢さ。そして何より、夫である浩を含めた家族愛。
ゲームのシナリオもビックリの運命に巻き込まれた美雨たちは、無事ハッピーなエンディングを迎えられるのでしょうか。
塩が専売されており地方と中央の格差による対立が存在する、古代中国に似ている国、黄河国。
専売制を廃しようとしていた先代皇帝が逝去し、若い皇帝が即位するも彼は酒池肉林に溺れてまともな政治を行おうともしない状況でした。
そんな中で都で普通に暮らしていた夫婦、崔浩と美雨のもとに将軍が訪れて、美雨が後続の血を引いていたことから今の皇帝に代わって即位することになってしまいます。
ごく普通の暮らしをしてきた、美雨は皇帝として政争に巻き込まれることになるのですが……。
序盤はコメディタッチで展開が進みますが、だんだん権力争いが本格的になるにつれて、謀略にまきこまれながらも主人公は、国を私物化する将軍や外戚と自分なりに戦うことになります。
ゲーム趣味の主人公がその知識やゲームで学んだテクニックで、内政の問題に取り組み、活躍していく様は意外性があって楽しむことができました。
女性主人公のファンタジーものが好きな方は是非ご一読を。
下級役人の僕こと崔浩には、遊戯廃人の妻がいました。
ごくごく普通の生活を送っていた二人でしたが、ある日とつぜん妻が皇帝になることに!?
その結果、彼女の夫である僕も宮廷で生活することになるのですが……
崔浩の妻である美雨はとても威勢のよいキャラで、見ていて飽きない女性です。
宮廷で生活する中で、しきたりや差別意識に辟易する場面でも、彼女は自分の考えをズバズバと話します。読んでいる私も、僕こと崔浩と一緒になって彼女の言動にハラハラする(笑)のですが、そんな彼女をとても小気味よくも感じました。
僕が美雨と一緒にいる気持ちにめちゃくちゃ共感です☆
ちなみに、本作は中華ファンタジーです。
作中には中華ファンタジー好きなら思わずニヤリとしちゃう中華らしい用語がたくさん登場します!
そちらも、かなり見どころですよ☆
妻が皇帝になったことで、崔浩と美雨に襲いかかる苦難の数々。
彼らはその苦難をどう乗り越えていくのか?
ぜひ、読んで確かめてみてください☆