構成について

 前回からだいぶ間が空いたが、構成について語ろう。


 ストーリーの構成の話だが、よくある三幕構成や、セイブ・ザ・キャットの法則にあるような話や、ストーリーをそれぞれのパートとして何分割~という話はしない。


 もっとざっくりとした、最低限のまとめかたを説明しようとおもう。


 前の部分で、ストーリーは作者による説明による説得だと述べたと思う。

 ここでいう構成とは、ストーリーを通して読者にテーマを説明して、結論を受け入れさせる。これを行うための「論理展開のパターン」のことを指す。


 校正で構成をみるというのは、文章が意図するパターンになっているか、それぞれの部分がきちんと役割を果たしているか、それをチェックする。


 まず、物事を説明する文章は、以下の2つのパターンがあると私は考えている。


 ① 序論>本論>結論

 ② 序論>結論>本論>結論


 新しい言葉が出てきたので、まずそれぞれの説明をしよう。


 「序論」はストーリーの問題提起、物語のテーマを読者に説明する部分だ。

 この世界に何が起きているのか、主人公の問題は何なのか。

 作者は読者に「これはから私は〇〇がXXをするというストーリーを見せます」と宣言して、その世界の現状や問題点、一般的な人々の反応を紹介する。


 次の「本論」は、エピソードだ。ここは作者が最も書きたい部分だろう。

 作者が作品世界に対して想像をめぐらし、多分この世界はこうなってるんじゃないかというイメージを提示し、その世界に登場人物、主人公と悪役の意志をぶつける。

 世界に反対するもの。同意するもの。何が間違っていて、何が正しいのか。

 本論とは、主人公の行動と世界(人々)の反応を読者に見せる部分だ。


 3つめの「結論」は、主人公が何かを得たり、失ったりする「まとめ」の部分だ。

 主人公は正しいと思うこと(あるいはその逆)を考え、主張し、行動する。

 結論ではその結果が現れる。読者はこれを見るために最後までページをめくる。


 では、部分の説明が終わったところで、構成に話を戻そう。


 ①はもっとも基本的なパターンだろう。

 まず最初に世界や人物関係を見せて、これが何の話なのかテーマを出す(序論)。

 次に主人公には乗り越えないといけない問題や障害があること、そして、なぜ乗り越えないといけないのか、その理由が明らかになる(本論)。

 そして最後に、主人公の行動の結果が明らかになる(結論)。


 ゾンビもので例えると、主人公の住む世界にゾンビが出て、次第に世界各地の状況がわかってくる。主人公は様々な人々と出会い、協力と衝突を繰り返しすが、主人公の行動の結果、ゾンビワクチンが完成して世界が救われる。といったものだ。


 なぜこれが基本的なパターンなのか。

 それはこのパターンが、日本語の文章のパターンそのものだからだ。

 このパターンはストーリー全体だけに存在しない。

 個々のエピソードや会話でもそうなっているか注意しよう。

 

 ②のパターンは、最初は①と同じだ。しかしその次に結論が来る。

 世界の問題を読者に示し、どうなればいいのかを先に説明してしまうのだ。


 再度ゾンビものでいえば、主人公の住む世界にゾンビが出て、主人公がすぐにゾンビワクチンを作り出して周囲の人をもとに戻す。これなら世界が元通りにできるはず。主人公はワクチンの普及のために行動して、ゾンビワクチンが各地に行き渡って世界が救われる……といったパターンだ。


 先にエンディングのモデルを読者に提示する。

 するとこれからどうなっていくのか、ストーリーの見通しが良くなる。

 チートをもらって何かする系は、このパターンに含まれるだろう。


・・・


 実際、勢いで書いた文章を校正するのは至難の業だ。


 書いてみたものの、内容がとっ散らかっている。

 エンディングがエンディングしていない。

 そもそも、テーマが作者にもわかってない、などなど……。


 どんな困難が待ち受けているのか、想像もできない。


 構成を直そうと思い立った時、まず何をやるべきか。

 それは単純化だ。


 何万字も文章を書いたなら、そこまでさせた「何か」が必ずあるはずだ。

 テーマ、エピソード、キャラクター。まずはそれを探そう。


 そこからテーマを逆算して、各要素を置き直していく。

 場合によっては、作り直しに近くなるだろう。

 だが、ストーリーのジャンルを別物にしてしまうほどの大手術は不要なはずだ。


 ストーリーを再構成するためには、作者が作品を理解しなくてはいけない。

 

 テーマは何か。

 途中から変なものが混じってないか?

 テーマがひっくり返ったり忘れてないか?


 エンディングで主人公がしたかったこと、自分が伝えたかったことは何か。

 最後に主人公がしたかったものが実現されているか?

 そもそもの話、主人公が何をしたかったのか説明されてるか?


 主人公が支持する要素と、主人公が反対する要素がしっかりと分かれているか?

 主張がコロコロかわってないか?

 主人公の協力者、敵対者は、きちんと自分の考えをもっているか?

 すべての要素が主人公をエンディングに誘導してるか?


 部分を見るのを止めて、全体をざっくりと捉える。

 それが再構成の近道だろう。

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