第2話 白嶺凛の頼み事
予鈴がなる数分前、蘭と生徒会の仕事をし終えた後冴は、自身の教室へと足を運んだ。
ドアを開け、いざ教室へ入ろうとするとその直前で何者かに引き止められた。
「ちょっとあんちゃん待ちな」
「なんだ、白嶺。朝からお前にだる絡みされるような事をした覚えはないぞ」
「さすがにその言い方は凹むぞ!冴ちん」
そう言って変な喋り方で冴を引き留めた人物は及び、手芸部の部長である白嶺凛【しらねりん】だった。そんな彼女は天真爛漫でオタクに優しいオタクであり、美形な彼女の容姿から男女ともに高い人気を誇っている。
「はいはい、それで何の用だ。お前がわざわざ出向くってことはどうせ何か頼み事だろう?」
「軽く流された!結構本気だったのに……まぁ察しがよくて助かるけどね」
冴に軽く流されたことに対して多少傷ついた彼女だったが、冴の言葉を聞いてすぐに本題に移ろうとする。
「簡単に言うと、総会の事についてなんだけど……」
「総会の事……?」
彼女の口から予想外の単語が出てきて、冴は困惑して彼女に聞き返した。
基本、生徒会の人達以外とは総会について話すこともそこまでないため彼女の頼み事というのが余計に分からなくなった。
「そうそう。正確に言うと、総会で使う資料の予算についてなんだけどね」
「あぁ……予算についてか。悪いがそれは俺にはどうにもできんぞ。そもそも俺は……」
「違うの、予算の変更を冴ちんにして欲しいんじゃないの」
「じゃあ俺に頼み事って一体……」
「冴ちんにはね、今日の予算を決める話し合いで私の立会人になって欲しいの」
「なるほど、直接的じゃなく、間接的にって事だな」
凛の頼み事とその意図を完全に汲み取った冴は、腕を組み少しの間考えた。
彼女達手芸部の予算の追加を俺がサポートしろということなのだ。
冴はここの回答によるメリットを思考し、答えを出した。
「わかった。俺が立会人としてお前に付こう」
「え……いいの?私断られる覚悟だったんだけど……」
冴の回答を聞くなり、大喜びするものかと思いきや、彼女は意外にも困惑した様子を見せていた。正直、凛は冴の回答にはあまりに期待しておらず、てっきり断られるものだと思っていた。
なぜなら、冴にとってのメリットがないに等しいから。
だが、冴えの心情はまた違った。
凛とは一年の仲ではあるものの、それなりに近しい距離だと思ってる冴にとっては、白嶺凛の頼み事というだけでも引き受ける理由には、十分なものだった。
「おい、なんだその反応もしかして嫌だったのか?」
「い、いやそうじゃないの!嬉しいよすっごく、でもこんな簡単に引き受けちゃってもいいのかなって」
「気にすんな。俺は別に生徒会に所属してる訳でもないし、友達の頼みを断る必要もないだろ?」
何気なく放たれた言葉だったが、自分への信頼を寄せてくれていることに対して、凛は笑みをうかべた。
「それじゃあ今日の放課後、家庭科室で待ってるね」
目的地と時間を言うと彼女はそのまま自分の教室へと去っていった。
迷える後輩の導き手 たこすけ @kotapi
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