迷える後輩の導き手

たこすけ

第1話 迷える後輩

私立俊逸学園。県内では最もレベルが高い進学校であり、由緒正しき名門校である。

桜が散り、緑を表す通りを今日も生徒達はその学び舎に向かって足を運んでいた。

しかし、ほとんどの生徒は途中でで足を止め、そこを歩いている生徒に注目した。


「やっぱりすげぇキレイな人だよなぁ」


「あぁ。入学式の代表挨拶もそうだったけどそのすぐで生徒会役員らしいぜ。」


「ひゃぁ。美人な上に頭良いとか最強じゃん」


流れるように長い黒髪に、茶色がかった瞳。そしてどこか幼さを感じさせるような顔立ちをした彼女に対し感嘆の声を漏らした。


その彼女名前は、朝雨蘭【あさめらん】。

先程もあったように、 2ヶ月前の入学式での代表挨拶、その後すぐに生徒会の役員へと任命されるなど一年にしてはできすぎと言われるほどの、秀才。

また、彼女の容姿に惚れた人々を玉砕してきたなどでも有名である。


「朝からあんな可愛い子見れるとかまじで運いいよな」


「どうにかしてお近づきになりたいよなぁ」


「いや、やめとけよ。この前バレー部でかっこいいって言われてる先輩ふられたらしいぞ。」


「まじか……イケメンには興味無いのか。なら俺にもチャンスはあるな!」


「それはねぇよ。だって見てみろよあれ」


一人の男子生徒が友人に彼女の方を見るように促すと、一人の男性が近づいて来るのが目に入った。


「意外と今日は早く来たんだな。蘭」


「先輩が早く来すぎなんですよ!言ってた時間より10分以上早いじゃないですか!!」


何やら親しげな会話をする二人。会話を聞く限りでは先輩後輩の関係で、そこにある蘭の姿はいつものように凛々しい様子を見せることなく、しっかり後輩と言った態度だった。


「あんな朝雨さん、初めて見たわ」


「私も。あの先輩誰なんだろ」


いつもとは違った様子の蘭を見て、他の生徒達はその疑問を呟くように言った。


「それじゃ、資料の作成教えてやるから、とっとと教室行くか」


「そうですね。ちゃっちゃと行っちゃいましょう!」


後ろの会話が少し聞こえていたのか、男は他の生徒たちに軽く会釈だけすると、蘭と並び二人で校舎の方まで向かっていった。


校舎の二階の端っこにある目的地、生徒会室へ着くと二人は机の上にある資料に目を通した。


「うわぁ……これ全部総会に向けての資料ですか」


「まぁそんなとこだな。中には要望も書かれた紙も入ってるから、俺たちはその仕分けと要望の整理が仕事だな」


軽く資料の説明を終えると、資料をめくっていき、必要なものを蘭の方へと渡していった。


「ちょっと!冴先輩!ペース早いですよ!!」


すると、何も考えずに坦々と仕分けを行っていた彼──響輝冴【ひびきさえ】に蘭は少し怒ったように言った。

生徒会の仕事にある程度慣れている彼のペースが蘭には少し早かったようだ。


「悪い悪い。そうだな、もうちょっとゆっくりやるか」


「そうですよ!先輩と話しながら出来ないじゃないですか!」


「はいはい」


訂正。どうやら仕事自体には着いていけているらしいが彼女にとって黙々と仕事をしたくないらしく、冴はそれをなだめた。


少しペースを落としながらの作業をしたものの、朝のSHR十分前には終わったのでその後の時間は二人で休憩がてらゆっくり話していた。











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