ラクダのお父さん

西しまこ

第1話

 ぼくはラクダのお父さん。


 お父さんだから、ネクタイしてカバンを持って、会社に行くよ。それがお父さんだからね。

 ラクダの国は砂漠だから、ぼくは砂漠をずっと歩いて会社に行くんだ。

 すごいんだよ!

 砂漠は、ラクダのお父さんでいっぱいなんだ!

 みんな、ネクタイをしてカバンを持ったラクダなの。

 もちろん、お母さんもいるよ。お母さんはネクタイじゃなくて、リボンをつけているから、すぐに分かるんだ。

 お父さんもお母さんもみんな頑張って働いているんだ。


「今日は暑いですねえ」

「砂漠だからねえ」

 ラクダのこぶの水は自分では飲めないなら、カバンから水筒を取り出して麦茶を飲む。暑いときは麦茶なんだ。

「あ。いつも息子がお世話になっています」

「いえいえ、こちらこそ」

「今度、いっしょにピクニックに行くって言っていました」

「ええ、聞きました」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ」

「そのピクニックですが、うちもごいっしょ出来ませんか?」

 ラクダのお母さんが話に加わって来た。赤いリボンをした、となりのラクダさんだ。


「ぜひ!」

「娘が喜びます。実は、うちのこ、お宅のらくちゃんが好きみたいで!」

「えっ。そうなんですか?」

「そうなんですよう」

 お父さん二人とお母さん一人で、ふふふと笑い合った。

 砂漠の中を歩くのは大変だし、ラクダでぎゅうぎゅうだから快適じゃないけれど、会社へ行くまでの道のりには、こういう楽しいこともある。

 週末のピクニック、らくはきっと楽しみにしているし、そして当日はとても楽しいんだろうな。

 想像したら、今日も一日頑張れそうな気がしてきた。

「それにしても、暑いですねえ」

「砂漠ですからねえ」

「麦茶は必須ですねえ」

 ラクダのお父さんはネクタイをして、お母さんはリボンをして砂漠をかっぽかっぽしてく。

 今日もいい一日だといいな。


 

  了



一話完結です。

星で評価していただけると嬉しいです。

☆☆☆いままでのショートショートはこちら☆☆☆

https://kakuyomu.jp/users/nishi-shima/collections/16817330650143716000

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラクダのお父さん 西しまこ @nishi-shima

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説