怪獣墓石

高黄森哉

都会の地下には怪獣が埋まっている


 地面を掘っていると固い何かに突き当たった。それは、怪獣の背中。まるでイグアナのような緑の鱗が穴の中に見える。運動場より巨大な鱗。


 村人は墓石を立てることにした。巨大な巨大な墓石を立てて、それが死んでいることにした。見ないことで居ないことにした。穴も埋め立ててしまった。


 造られた墓石は天球を摩するほど高い。ある人は言った。あそこに縦穴を掘れば住めるのではないか。それは予言だった。


 人がそこに穴を掘り住み始める。人が集まると、人が集まっていることに価値が生じ、結果、雪だるま式に居住者は増えていく。


 ある日、怪獣が目を覚ます。林立する墓石はグラグラと揺れ、根元からへし折れ、横向きに地面へと落下した。たくさんの人が死んだ。


 あの墓石は人々のためだったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

怪獣墓石 高黄森哉 @kamikawa2001

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る