電動歯ブラシくん 🚛

上月くるを

電動歯ブラシくん 🚛





 ヴイ~ン、ヴイン、ヴイ~ン、ヴイン……。

 おニューの電動歯ブラシは張りきりました。


 なにしろこのユーザーさんときたら、この歳まで手動一本やりだったんですって。

 なので、こわごわ口に入れてみたぼくをスイッチオンしたんだけど、目玉まん丸。


 きゃあ、くすぐったくて堪えられないだの、こんなに激しく振動したら歯の表面が削られちゃうだの、45度の角度保持は無理だのと、ものも言えずに(笑)大騒ぎ。


 そのくせ、ノリやすい性質らしく、少し慣れて来たと思ったらもう強度をあげ冒険を楽しんでいる……どうやら、なんだかなあのユーザーに当たってしまったみたい。




      💻




 そもそもぼくが通販サイトの巨大倉庫から出荷され、宅配便のトラックに乗せられ片田舎の小さな家の玄関に置配されたのは、この口の持ち主がクリックしたからで。


 内実を明かすとね、若いころから定期検診に通って気をつけていたつもりの歯茎がお歳のせいか少しゆるみがちになったので、ちょっとした気の迷いでワンクリック。


 ちょうどキャンペーン中だったし、ポイントも溜っていたのでお得な買い物と悦に入っていたんだけど、ふと待てよと思って、電動歯ブラシのデメリットをチェック。

 

 すると、振動による削りすぎに注意だの、歯茎を傷めるだの、磨いているつもりになりがちだが本当は磨けていないだのと、いくつかの不安材料が発見されたの。(^^;


 それなら、注文のクリックを押す前に調べておけよという話なんだけど、粗忽者のユーザーさん、いつもこういう傾向にあり、急に怖くなってキャンセルをクリック。


 とあろうことか「この商品はキャンセルできません」の通知が届き、えっ、そんなことあるんだ~(ふつう簡単にキャンセルできる方がおかしいんだけどね)で撃沈。


 


      🎁




 かくて、なんの因果か望まれない配達となったぼくは、露骨に渋顔のユーザーさんにいやいや梱包を解かれ、なにこれ? 何度もケチをつけられて、ようやくお口へ。


 ところが、どん底だったぼくの運、ここから上向きになって来てね、せっかくお金を出して購入したんだから(実際は大半がポイントだけど)使わにゃ損損となって。


 そうなると、人間ゲンキンなもので、メリットばかり探し出し、あら、歯の表面がツルツルピカピカじゃないの、歯茎もだいぶ締まって来て、いい感じ、ルンルン。♫


 欲張りの欲はさらに突っ張るらしく(笑)以前から気になっていた歯周ポケット用歯ブラシも購入し、なんだか近ごろ歯磨きのために生きている様を呈して来た感じ。


 当初、歓迎されない客だったぼくとしては、ほらごらんと言いたいところだけど、ユーザー満足度を確保して社会貢献ができるなら、電動歯ブラシ冥利に尽きるかも。




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