可愛い嘘に振り回された日

 一輪車部は、やはり初等部に人気の高い部活だ。

 しかしこの学園のこと、中等部高等部大学部に進んでも一輪車の道を極めたいと志す若者もまたいるわけで。そんな人材は、ただ乗るだけではなく、平均台の上を走ったり障害物を乗り越えたりと、いわゆる”トライアル“の道に進むのが一般的である。

 そんな人工の障害物が設定された、一輪車部のコース。その一角に、

「ほら、体の軸を意識する! 平均台クリアしたら次は電車のレール行くよ! 最終的には水に濡らすから!」

 びしばしと指示を飛ばすマスターがいた。そして、

「コケて体中痛え……。こっちは普通の一輪車も乗れねえってのに、いきなりコレはねえだろ……」

 体中すり傷になって悪戦苦闘する、トイトイ殿の姿も。

 しかもトイトイ殿の乗っているのは、ただの一輪車ではない。タイヤはある。しかしサドルがない。フレームもない。ペダルだけが申し訳のようにくっついた、まさに”究極の車輪Ultimate Wheel“。

「……いたじゃない。トイトイ殿」

 吾輩はパイリァンを横目でにらんだ。その声でマスターも気が付いたらしい。

「なに、ミケ? リァンちゃんと学校デート?」

「そういう訳では……。マスター達を探していたんですけどね」

 吾輩はここに至るまでの経緯をお二人にバラした。

「「二人で部活めぐりねえ。いいじゃん、すれば?」」

 意外なことに、お二人の答えが一致した。

「そうは言いましてもね。パイリァン、これはどういうことなの?」

 吾輩は持って行き場のなくなったストレスを肩の上にぶつけた。そんな顔を見て、パイリァンはつぼみがほころぶような。かすかな笑顔を返した。

「今日は何日?」

「それは4月1日……あっ!」

 吾輩、どうやらすっかり失念していたようだ。

 そうだった、この子は「嘘がつける」。



※pixiv様の執筆応援企画に応募したものを、カクヨムにも投稿しました。

 また推敲段階の原稿をmixi日記に友人限定公開しています。

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吾輩はロボである ~if~ 飛鳥つばさ @Asuka_Tsubasa

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