絵馬
アイアンたらばがに
第1話
絵馬というものを知っていますか。
神社やお寺に行くとよく飾ってあるお願い事が書かれたあれです。
褒められたことではないのですが、私は寺社仏閣に立ち寄った時に絵馬を見るのが趣味なのです。
その中でも探してしまうのが恨み言の書かれた絵馬です。
彼氏と浮気相手の破滅を願うような内容だったり、同僚のやることなすことすべてが上手くいかずに苦しんで死んでほしいという内容だったり、そんな絵馬をついつい探してしまいます。
少し前、近所の神社に参った時にも同じように探していたのですが、その中に奇妙なものがありました。
絵馬の裏面、文字の書いてある方にはいつも見るような恨み言が書かれていました。
けれども絵馬の表、普段であれば神社の神様や鳥居、干支などの縁起の良さそうな絵が描かれている面におかしな所がありました。
縁起の良さそうな絵ではなく、ミミズの這った跡のような奇妙な線が隙間無く描かれていました。
思わず背筋がぞっとしてしまうほどの迫力があり、音を立てないようにそっと手を離したのです。
その場で色々と検索してみたのですが呪術や呪いのようなものは全くヒットせず、あれが何なのかという好奇心がますます強まりました。
そこで、もう一度件の絵馬をしっかりと見てみようと思ったのです。
かかっている絵馬に手を掛けて裏返すと、やはり良く分からないその線がびっしりと描かれています。
けれども、じっくりとそれを眺めていると一つだけ気づいたことがありました。
線が動くのです。
触ると線がずれるのです。
掻き分けるように触ると、線の内側から絵の一部が見えました。
なんてことはありません。
この絵馬は書いた人が体毛を埋め込んだ絵馬でした。
絵馬 アイアンたらばがに @gentauboa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
食べて美味しかったもの/アイアンたらばがに
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます