本作は、似顔絵の物語ではない。遺顔絵を描く少女の物語だ。遺顔絵とは、遺影とも違う。文字通り、この世を遺して逝ったはずの人々の顔を描くものだ。
そこにはバースディケーキも用意される。何故ならこの世に遺ってしまった人々は、遺顔絵によって成仏し、この世に生まれ変わるからだ。最期にハッピーバースディの歌を贈られ、あの世に送られる。
しかし、遺体の中には、顔が分からなくなった遺体もある。そんな時には遺顔絵の本領発揮となる。それは本来、タブー視される儀礼の一種なのだが、主人公の少女は、それをやってのける。
そして本作に欠かせないのが、遺顔絵のバディとなる青年だ。主人公は仕事はきっちりやるのに、私生活はものぐさだ。そんな主人公の世話をやくのが主人公が愛した青年だった。しかし、この青年にはある秘密があった。
各章に花の名前が付いており、その花の花言葉が鍵となる。
天才遺顔絵少女と、秘密を抱えた青年。
果たして二人の歩むべき道とは——?
遺顔絵師という新たな視点で描かれる、新しい弔いの物語。
是非、御一読下さい。