第19話 カスミ姫、決着の場を見届ける。

本城は宝臧院に向かっていく。

離れてるこちらにも届く、宝臧院の豪槍の覇気がその槍に纏っていき、本城を刺し迫ろうとしてたが、本城も気迫は負けてない。


服を掠めるも、寸での所で躱す。

本城は先程と同じように、正眼の構えで、躱す、捌くと言った動作でジリジリと距離を詰めていく。

宝臧院の卓越した槍捌きにも、臆せず、ただ、ただ、槍を刀で捌き、ぶつかり合う二人の得物は、火花を散らしながら削り合っている。


「お前程の侍が、そんな忠義とやらで、自分を縛って生きてて楽しいか? 」


「俺が選んだ俺の道だ、貴様や天童のような俗物には分からまい! そして…貴様の自慢の十文字槍も主人に呆れてるかもな」


「何!?」


「ふん!!」


ぶつかり合う本城の刀と宝臧院の十文字槍は、本城の渾身の振り下ろしにより、十文字槍は片側の刃が折れた。


「やるな…お前のとやらが、俺の槍をここまで消耗させるとは…」


「降参するなら、しても構わんぞ、二度と姫様の前に現れないと言うならな」


「冗談を…お前こそ、俺の槍を凌くので、精一杯のではないか? 服装も立ち会ってから、随分、みすぼらしくなってよ」


「そう思うなら、仕方ない…俺の取っておきで、葬ってくれよう」


宝臧院が向かってくる、本城は動かない!

あれでは…槍の餌食になるだけではないかと、心配していると、槍が本城を貫く刹那、本城は動いた!


――――北流一刀流、互同無心ごどうむしん


槍の先端が本城の胴体をすり抜け、いや、本城が横に…十文字槍の折れた方へ身体を流し、そして…そのまま、宝臧院へと迫り…斬られると思ったのか、先程と同じく、槍の柄で防御の姿勢を取る。


だが、ここからが、違った!



――――見様見真似、大月王烈衝!



槍の柄ごと、ぶった斬ったのだ!!!


「ガハッ!」


宝臧院は斬られるも、二つに両断された槍を持ちながら、片膝をついた。


「勝負ありだ…宝臧院…」


「何故だ…お前があのと同じ技を…」


「剣聖? 俺のさっきの技は剣友の物だが? 」


「まあいい…まさか、お前如きに負けるとは…天童や剣聖に再び挑む事は叶わんな…」


「貴様、何を! 」


奴は両断された刃の付いてる方で、自らの胸

を刺したのだ。

胸からおびただしい、血が吹き出し、その場を鮮血に染めていく。


「本城毅一郎誠だったな…お前に会ったのが、俺の運の尽きだったみたいだ」


「……」


「何故、そんな顔をする、主君の敵が一人減ったのだ…だがな…冥土の土産だ、忠告してやる…残りの十界仙、天童にはお前達は敗北する……俺に勝った程度で調子に乗らな、い、こ、と、だ…」


本城は、悲しいそうにその場に立ち尽くしていた。


「本城殿! 」


東堂が駆け寄り、本城の肩に手を置く。


「気に病む事はござらん」


わたくしやハスミも東堂に釣られるように、本城の方へ向かう。


「俺は初めて人を斬った…」


「そうでござるか…」


十界仙に入り、人外の道へ進んだ者を本城はと呼んだ。

それが、適切かどうか分からないが、人外に身を落としてまで、自分の道を進んだ者を本城は、哀れんでいるようだった。

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姫様はオラの事が好きなのか? 何!?違う?それなら、惚れさせてみせるっぺ 人生真っ逆さま @bakayaroubakayarou

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