回せ!200連ルーレット

アーカーシャチャンネル

本編

「今年のおみくじは大凶か」


 つぶやきサイトで行われているフォロー&リツイートキャンペーンで、彼が引き当てたのは大凶だった。


 大吉であれば何かが当たるわけではなく、参加自体で抽選に参加できるというものである。


 運が良ければ現金も当たるので、配信に使う機材などの費用には当てられるだろうか。


 リツイート数を見ると、既に10万人規模となっていたので当たるかどうかの確率も低いかもしれないが……。


「それでも、この状況は……」


 彼がノートパソコンで見ていた光景、それは自分が参加した物とは別の類似キャンペーンで、炎上しているものだった。


 個人がやっているものの場合、アカウントを乗っ取ったり、中には無差別にダイレクトメールを拡散するようなケースもあるという話である。


 それより前にアカウント乗っ取りなどがニュースになっていたのもあってか、それを連想して情報を集めずに炎上させているだけ、にも見えたのかもしれない。


 一連の情報を拡散しているまとめサイトは、ある意味でもやっていること自体がギリギリで犯罪に該当するであろう妨害行為なのだが、フォロワー数の多さもあってか個人では動けないという可能性も高いだろう。


「何か打開できるような策は……?」


 ふと発見したのは、自分がプレイしているアプリゲームのキャンペーンだった。



 年が明けての2023年正月三が日も終わり、そのころを見計らって彼は配信を始める。


 配信と言っても、彼の場合は動画サイトにアカウントを持っているわけではない。動画サイトの中には動画アプリのようなサイトもあるが、それもアカウントを所持しているわけでもなかった。


 彼の持っているアカウント、それはつぶやきサイトだったのである。


 彼は、つぶやきサイト上で配信者の行うような配信を行うというのだ。ある意味でも無謀な話だろう。


 小説サイトで活動するような文章のVTuberも存在するのだが、つぶやきサイトとなると……単純に『バズり』目的のユーザーなのでは、と言われかねない。


 ボイスラジオ感覚で配信を行うようなアバターという概念のない配信者もいるかもしれないし、文章VTuberに至ってはアバターも音声さえもないのだ。


 彼の行う事を単純に『つぶやきの連続投稿』という者もいるかもしれないが、その辺りは突っ込んだら負けなのだろう。



『本日は、ガチャキャンペーン最終日です! これをさっそく回したいと思います』


 URL記載はないが、添付されている画像には200と書かれたルーレットが表示されている。


 これを回しても、どう転んでも200は確実なのだが……誰もツッコミのコメントを入れようとはしない。


『200連無料が出ました。やはりというか、最終日は大盤振る舞いですよね』


 次のつぶやきは、200連無料が出た画像が添付されている。これを貼らないと、もしかするとでまかせでつぶやいているのではないか、という炎上を防ぐ狙いもあった。


 それでも悪意あるユーザーは自分のつぶやきを『バズる』ようにするため、色々と他者を炎上させるようなつぶやきを繰り返す。それがネット炎上の正体なのだ。


 彼の狙いは、案の定というかそうした勢力の動きを止める意味でも一定の効果はあったのだが……。


『次は、早速の虹演出が来たようです』


 そこから数分ほどしてつぶやきが更新され、虹演出を示す画像と最高レアの武器が出た画像を添付、そこからしばらく更新を続けていく。


 確かに他のタイムラインなどを見れば、彼と同じように同じゲームのガチャで最高レアの出現報告を行う人物は多数いた。


 間違いなく、彼の引きは神引きであるのは疑いもないのである。


 最高レアと言っても、未所持武器は他のプレイヤーでそれぞれ違うので、人によっては「持ってる」と思う人もいるかもしれない。


 たとえ、おみくじで大凶が出たとしても、気持ちの持ちようによっては大吉にもなりうる可能性がある、と。



 最終的に200連無料ガチャ配信が終わり、そのころにはフォロワーが増えたというようなことはなかった。


 彼としても、フォロワーが増えたりするのは二の次と考えていたので、そこは問題視しないのだろう。


 一番の問題は「SNS炎上をするユーザーが容易に増えてしまう事」だったので、一歩間違えれば爆発的にそうしたユーザーを増やしてしまうような行為には釘をさしておく、そういう狙いだったのかもしれない。


 SNSは使う人によっては、大量破壊兵器にもなりうる……というつぶやきを見た際、彼は「明らかに間違っている」と考えていた。


 ネガティブばかりが拡散し、そこからユーザーが大量に減る事を彼は望んでいない。そこからサービス終了になったら、それこそ負の遺産と言われかねないだろう。


 だからこそ、彼はSNSの使い方には気を付けなければ、と思うのだ。



 これ以上、同じようなケースを生み出さないようにするためにも、あの時に大凶を引いたことを教訓にしていくことは重要なのかもしれない。


 それからしばらくして、炎上行為をお粉用としたまとめサイトがアカウント凍結されていたが、また何かを繰り返す予兆の可能性を、彼は否定しなかった。


 歴史はまた繰り返す、そうならないことを彼は祈るばかりである。

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