面談

 嫌な空気が立ちこめている。通気性の悪い地下だからか、素性の解らない生物と相対するからか。

 どちらにせよ、私が直々に話を持ちかけないと我が国の将来は危うい。

 この国の一存は、私の腕に掛かっている。

 この生物の性質は、生態記録――といっても、にわかに信じがたい、に殆ど記載されているだろう。調べきれなかったこともあるだろうが、じきにわかることだ。

 

 特殊なノックをして、ドアを開けるよう頼む。

 すぐさまドアの鍵が開き、職員の一人が席に案内してくれた。

 おそるおそる視線を上げると、案の定私は息を吞んだ。



 手を後ろで拘束されている、その生物の見た目は十代の女性にも見えた。しかし、瞬き一瞬の間に四十代男性の雰囲気を持っているようにも見えた。

 生態記録は本当だった。まるでファンタジーのような内容だと思った。

 ――が、これを見たからには、信じざるを得ない。

 

 その生物は、机に脚を乗せて椅子に座っていた。傲慢さは記録から薄々気づいていた。それを帳消しにするほど艶のある美形が、私を睨み付けている。


 私はごほん、と咳払いした。

 私がこの生物の太鼓を持てなければ、この国は終わりだ。そう思うと、脇から汗が染み出てくる。指先の寒気が止まらない。息も途切れ途切れ、過呼吸になっている。

 唇を震わせたまま、私は声を発した。


「もし、君に名前があれば……だが、ぜひ名を聞かせてもらいたい」

その生物は、おもむろに立ち上がった。

椅子を踏み台にして、机へ登った。そしてその生物は、ぽつりと語った。



「メアリー・スー」


 






 『――昨日、T町内の地下で原因不明の爆発事故が発生しました。国選警備隊は、現場の遺体の身元、事件の発生の経緯と原因を調査中です。次のニュース――』

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生態記録 @てくび @rororo-39

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