第2話 えいぎょう〇まんの人と時

「ぎょ、ぎょ、ぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


「ざ」


 男女の二人がおりました。一人は餃子ヘアーに白いエプロン姿をした筋肉隆々の全身裸のような男で、女は黒髪のポニーテールに、ジトっと沈んだ覇気のない目をして、これまた白いエプロン姿でいかにも出前にでそうな、活発そうな服を着ているけど、元気ないなという感じでした。


「なあ、トキ。どうして、餃子が売れない」


「キモイ」


「うっ。そうだよな。わかってたんだ。ダンジョン前で冒険者に声をかけて、あっと驚く感じで売ろうと思ったんだけど、みんなこの姿に引いちゃうんだよね。うんうん、しってたさ、ははは」


 ぽいっと餃子ヘアーをすてて、エプロンも男はすてました。まさかの裸と思いきや。


「残念」


 短髪ヘアーの男はにかっと笑いました。


「ははは。裸じゃないんだなあ。実はシールドパンツという。これも立派な冒険者の装備なんだ。これで、みんな俺にフレンドリーに接してくれるはずだ」


 黒塗りのシールドパンツとはこれいかに。実に残念きわまりないブリーフである。


男はちゃんとみなりを整えれば、どこぞの貴族や大富豪と見間違うほどのイケメンぶりだというのにね。


 つけるなら黄金のブリーフだっとトキは内心、もっこりした黒光りしたブリーフを冷ややかに見つめて思うのだった。世の女共は金に弱い。イケメン、黄金ブリーフなら、絶対に売れるだろうっと。


「客」


 ダンジョン帰りの若い女性ふたりがこちらにやってくるところだった。


「ふぉぉおおおおおおおおおお! おきゃくさぁああああん! ぎょうざいかが……」


「「きゃあああああああああああああ! 変態!」」


 すたこらさっさと客は逃げて行った。


 なぜだ。男は悩んだ。


「なあ、一体、これからどうやって生活しよう」


「ギルドに戻れば」


「そうだよなあ。わかってはいたんだけどなあ。でも、ギルド追放されちゃったしなあ。俺、お金儲けとか無能だし。仕方ないか、はははは!」


「……」


「よし、帰って飯にするか」


「ダンジョン」


「いいかい、トキ。ギルドの許可証がないと魔物の素材でお金儲けできないんだよ」


 幼女を諭すように男はいいました。実際、みてくれは幼女そのものなんですが、トキは美少女だぞっと付け加えました。


「飯」


 トキはダンジョンを指さしました。


「なんだって?」


「ダンジョン、飯」


「ダンジョン……飯? もしかして!」


 そういうと、男はトキを連れ、ダンジョンと反対方向に駆け出しました。そこには本屋があり……


「ダンジョン飯! これか!! これのことだったのか!!! トキ!!!!」


「アホ」


NHK

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【短編連投】カフェで本を読むふりする、午後のコーヒーが美味いひと時 マネーコイコイ @moneykoikoi

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