二十膳目:一月某日(水)全員、A型

「明けましておめでとうございます。今年もよろ……ゲホッ! ゲホゲホッ!」


 年末に罹患したものが尾を引き、年が明けても咳が治まらない。

 診断が出た段階で高熱は覚悟していたが、まさか咳にこんなに苦しめられるとは……。


 最初は、我が家の寝ぼすけ坊主から。

 通っている高校であっという間に感染が広がり、生徒だけではなく、先生方も数多くダウン。

 その後すぐに、自分と連れ合いも感染ってしまい、家庭内感染を防ぐことはならず。

 全員、インフルエンザのA型。

 去年は、我が家の寝ぼすけ坊主が受験生ということもあり、予防接種はもちろんのこと、『絶対に風邪を引かない・持ち込ませない!』と神経を尖らせていたのだが、今年は『まあ、何とかなるだろう』と気が緩み、完全に油断していた。


 その結果が、これ。

 高熱にうなされるだけではなく、咳が止まらないため、睡眠もろくに取れず。

 さらには、食欲も湧かず、喉を通るのはゼリー状の物や果物類だけ。

 肉類が大好物な我が家の寝ぼすけ坊主も、それらはまったく身体が受けつけず、体調不良時のお助けものの『海苔巻き』も、今回はほとんど食べることが出来なかった。

 ジジババだけには感染が広がらなかったのが不幸中の幸いだったのだが、このままほとんど食べることが出来なければ、さらに症状は悪化してしまう。

 体力を回復させるために、喉を通りやすく、かつ、何かエネルギーになる物をお腹に入れなくては……。


 そう思い、作ったのが、『たまご雑炊』

 鍋にたっぷりの水と出汁昆布を入れ、沸騰直前に出汁用の鰹節をこれまたたっぷりと入れ、旨味が浸透するようにゆっくりと沈ませる。

 その間に、炊いてあるご飯をザルに入れ、流水に注ぎながら軽く切るように混ぜていく。

 雪平鍋に、香りがふんだんに凝縮された出汁と水を切ったご飯を入れ、少量の塩と醤油を軽くたらりと入れたら、弱火でコトコト。


 クツクツ、コトコト。

 クツクツ、コトコト。


 優しく、美味しそうな合図が聴こえてきたら、最後に菜箸の先に溶き卵を流し乗せるようにして鍋へと注ぎ、蓋をして数秒ふわりと煮立たせ、完成。


「…………ふはぁ。美味しい」


 温かく、柔らかく包んでくれる、たまご雑炊。

 身体に、心に、染み渡る。



 という感じで、十二月からこの一月前半まで散々な目に遭った我が家。

 現在はインフルエンザB型が流行り始めているとのことなので、皆様も、御身体には御自愛を。


 それでは、新年のご挨拶が大変遅くなりましたが、今年もどうぞ、よろしくお願いします。

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