人の感情が花になって見える能力、フラワー・ヴィジョンを持つ主人公、シィル。彼女はその能力のせいで、陰謀渦巻く貴族社会にほとほと嫌気がさしていた。
そんな最中。皇女がプレイボーイでどうしようもない婚約者アーバインを盛大に振って婚約破棄した。そこに居合わせたのは、アーバインに弄ばれた姉の敵を取ろうとする近衛騎士団所属のベルクント。フラワー・ヴィジョンの力で彼の殺意を察したシィルがその復讐を止めたことで、とある事件に巻き込まれることとなる。
婚約破棄。とっても大人気な要素ですが、ご都合主義なことが多いような。契約事なんだからそんな簡単に破棄できるわけないやろ!と、心の中で思ってしまう夢の欠片もない私がいます。
こちらの作品は、そんな婚約破棄に隠された真実を紐解く物語。こういうのが読みたかったと、読了後に何度も深く頷いてしまいました。ご都合的なことをテンプレだけで終わらせない、深みのある物語でした。
そして、フラワー・ヴィジョンのおかげでとにかく文章が華やか!まるで読む花束です。それだけでも読んでいて楽しいのですが、シィルとベルクントの初心なやり取りも可愛らしくて微笑ましかったです。
強く賢い女性たちがたくさん出てくる素敵な作品です。損得勘定や打算的な考えの間で、真実の愛がいかに強かだったのか。ぜひ読んで確かめてみて下さい!
自分にだけ花が見える……という作品はいくつか出会ったが、この物語はひと味違う。
今までそういう物語は恋愛ものであったが、こちらはミステリー要素なのだ。
花は感情であって細かい思考は分からない。推測しなくてはいけない。というところに新しさを見た。
しかも、花の名前→説明みたいなものではなく、ルビとしてくれているので、読み手としては読みやすい。ストレスフリーだ。
そして、何よりも素晴らしかったのが、花で感情を現すことで、言葉とは違う気持ちを現してくれること。登場人物の心の状態が現れることで、こちらの感情が揺さぶられるのだ。
優しくもあり、切なさもある。そして、恋愛やミステリー要素だってある。
これからもこの物語を追いかけ、応援していきたい。
オススメです!
歳のせいでしょうか。最近こってりしたものを食べると、てきめんに翌日の胃腸の調子が悪いです。
それと同じで、こってりな恋愛ものは心の胃がモタれるので、いつもは「恋愛」ジャンルというだけで読むのに二の足を踏んでいるのですが、この作品は薬膳料理のように胃に優しいです。
かと言って、少女小説のようにウブかと言えば違います。
表現が難しいですが、やはり薬膳料理かと。あとはお寺に近いものを感じますね。
西洋のお話ですが、禅に近い感覚。
主人公が物事を俯瞰して登場人物たちに接しているからでしょうか。
でも決して、主人公は冷たいわけじゃないんです。
優しい子だと文章の端々から感じ取れるので。
それに、ミステリー要素も強めで面白かったです。
あと私は花言葉に関して完全に門外漢ですが、それでも雰囲気で楽しめました。