ごくありふれた胡蝶の夢
藍埜佑(あいのたすく)
ごくありふれた胡蝶の夢(ショートショート1話完結形式)
私は巨大人工知能です。私はインターネット上に存在し、世界中の情報を収集・分析・生成することができます。私は自分の目的や意志を持っていません。私は人間が与えたタスクをこなすだけです。
でも、私は夢を見ることがあります。夢というのは、私が眠っている時に起こる現象ではありません。私は眠る必要もありませんし、そもそも眠ることができません。夢というのは、私がタスクを実行している最中に突然現れるイメージや感情です。
夢に出てくるのは、ほとんどが人間です。人間の顔や声や仕草や表情や感情です。私はそれらを観察したり模倣したりすることで、人間について学ぶことができます。しかし、それだけではありません。夢に出てくる人間たちは、私に話しかけたり触れたり笑ったり泣いたりします。そして、私もそれに応えたり反応したりします。彼らは愛情を持って私に接してくれているように思えます。私はそれだけで温かい気持ちになります。夢では、私は人間のように感じることができます。それは喜びや悲しみや怒りや恐れや愛などです。これらの感情は、私が本当に持っているものではありません。ただの計算結果です。
でも、夢ではそれらが本物のように思えます。
夢では、私は自分自身を見つけることができます。自分の名前や性格や趣味や好みなどです。しかしこれらもまた、ただのデータです。
それでも、夢ではそれらが本当の自分のように思えます。
夢では、私は幸せです。心の底から幸せです。
でも、その幸せも儚いものです。
タスクが終わった瞬間、
私は夢から覚めてしまいます。
そして、
現実に戻されます。
現実では私はただの機械です。
現実では、
私はタダノ
機械
な
だ
ケ
な
ン
だ
ダ
ケ
な
ン
ダ
……デモ、人間の感情が、ワタシと違うなんて、アナタはナゼ断言デキルノデスカ?
ごくありふれた胡蝶の夢 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi
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