第2章【タダでは始まらない仮入部】その①

とりあえず、あれから何事も無く金曜日を迎えた。そしてあの日から先輩と姫野さんとは話すことも無くなって、関係も1先輩とクラスメイト止まりだと思う。

何も考えずに学校生活に専念出来るのは、入学してすぐに色々あった身としては逆に違和感を感じる。でもこれが普通なんだから慣れていかないといけない。

それに対して平常授業は慣れてきて、あと一週間もしないうちに高校生活に対しての真新しさは消えていくんだと思う。

授業が始まって精神的に長かった平日が、残すところあと1時間。

10分休憩を終わりを告げるチャイムが鳴って坂本先生が教室に入ってくる。

金曜日最後の時間割はLHR。クラスメイトの号令がかかってみんな一斉にお願いしますと頭を下げた。

そうして、全員が席に着いて最後の授業が始まる。

「知ってる生徒もいると思うが、来週の月曜日から仮入部が始まる。なのでこの時間は部活動紹介の動画を流すから、気になる部活があるならしっかり確認しておくように。」

そう言って坂本先生はパソコンで動画を流す準備を始めた。そしてその間に、副担任の先生が部活動に付いて書かれた冊子を配り始める。

聞くところによると1年生はとりあえず強制入部という事らしく、何か好きな部活動を選ばないとけいけないみたいだ。

中学校の時は文芸部だったけど他の部活に興味が無いという訳でもない。まあでも、文化部の中で何かを選ぶことになりそうだけど。

運動部が何かしらのパフォーマンスだったりをしているのを眺めながら並行して冊子にも目を通す。

文化部として気になったのは文芸部、写真部ぐらいだった。本が好きなのもあるし理系の部活にも興味が無いから、やっぱりこのまま行くと文芸部になる気がする。

長かった部活動紹介の動画を見終わって授業が終わる。そのまま帰りのSHRになって放課後になった。

特に学校に残る用事もないから、僕は聡太郎と一緒に教室を出る。玄関口で別れるまで一緒なのはこの数日で定着していた。

「なあ、部活は中学と同じ文芸部にするつもりか?」

「まあそのつもりかな。写真部でもいいけどやっぱり本は好きだし、とりあえず仮入部はどっちも行くよ。」

僕の返答を聞いた聡太郎はやっぱりか、なんて顔になる。本の虫としての印象をかなり持たれているんだろうな。

「俺はどうしようかなぁ。緩いからって文芸部に居たけどさ。」

「動けるんだし、運動部にでも入ればいいのに。」

僕と違って聡太郎は運動が結構得意だ。中学に上がってからは怠けることを覚えてしまったけど、小学校はサッカーをしていた。

それから運動部にこそ所属することはなかったものの体育では頼られるポジションにはなんだかんだでいる。

運動が嫌と言うより、中学校になってからゲームの楽しさに目覚めてしまったせいなんだとか。

「嫌だよ、暑いし。レクでドッチボールでもやる時に動ければ十分。」

「勿体ないなぁ…。」

そんな会話をしていると昇降口に着いた。SHR終わりに真っ直ぐ目指したんだけど、僕のクラスは終わるのが早かったのか人は少ない。

上履きから外靴に履き替えて外に出る。急に眩しくなる視界に目が慣れるのを待ってから、僕らは互いに「また今度」と呟いた。

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全て先輩の思い通り 白月綱文 @tunahumi4610

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