いいわけばなし

孤兎葉野 あや

いいわけばなし

「ちょっと! 今、私の分のお肉食べたでしょ!」

「し、知らないにゃあ!

 あたしの近くにある肉を取っただけだにゃあ・・・!」


おじいちゃん、おばあちゃん・・・


「近くにあったって、最初にハルカがちゃんと分けてたでしょ!

 なんで私の分に手が伸びてくるの!」

「あ、あたしの手のそばにあったからにゃあ!」


私は今、異世界で修羅場の真っ只中にいます・・・



「ねえ、ミア。さっきクルも言った通り、これは三人で分けたものだからね。

 間違って取っちゃったなら、返さないと。」

「うぐぐ・・・」


さて、現実逃避していても解決しないので、私が動かなければ。


元々、『犬の民』と『猫の民』という種族間の対立もある、

クルとミアの・・・正確にはミアとは会ったばかりの私も含めて、

親睦を深める場なんだから。


・・・まだ手遅れではない、はず。



「肉が近くにあったら、あたしは反射的に手が出るにゃ。

 近くにあるのがいけないにゃ。」

「うん、清々しいくらいの言い訳だね。

 クル、狩りで使う紐は持ってきてる?」

「もちろん、いつでも使えるよ。」


「な、何をするつもりにゃ?」

「反射的に手が出ちゃうなら、

 そうならないよう、縛っておいたほうがいいかと思って。」

「いや、全身ぐるぐる巻きにすればいいんじゃない?」


「い、いいわけないにゃあああああ・・・!」

ミアの悲鳴が、草原に響き渡った。


「それじゃあ、ミア。もう手が出ないよう十分に注意してね。

 間違って取った分のお肉は、クルに返すよ。」

「あああああ・・・・・・」

「ありがとう、ハルカ。」



「そうそう、お肉だけじゃなくて、

 私のところのお菓子も持ってきたから、これも分けて食べようか。」

「やっぱり! いい匂いしてたもんね。」

「んん! こっちも気になるにゃ!」

私が家から・・・二人にとっての異世界から持ってきたお菓子に、喜びの声が上がる。


さて、こちらも喧嘩にならないよう、いい分け方を考えなくては。

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いいわけばなし 孤兎葉野 あや @mizumori_aya

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