ラブコメデスゲーム

姫路 りしゅう

僕は

 いつも僕は、理由を探している。

 自分が納得できる理由を、探している。


 例えば、無筋のドラの四索たぶん当たる牌を切るとき。

 この手牌なら押すべきだから、ノーヒントだから、当たっても仕方がない。


 例えば、ババ抜きの最後の二択を目を瞑って神に頼んで引くとき。

 視線じゃ読めないから、どうせ50%だから、仕方がない。


 そして、そういう時はたいてい負ける。


 負けても仕方がない理由を探してしまった時点で、負けるに決まっているのだ。

 それはマーフィーの法則の話でも確率の話でもなく。

 自分に都合のいい、押すだけに十分な理由が見つかった時点で、人は考えるのを辞めてしまうからだ。

 最後まで考え抜いていれば、から四索が危険であることが予想できていたかもしれない。

 最後まで頭を回し続けていれば、からジョーカーの位置を特定することができていたかもしれない。


 これはゲームに限った話ではない。


**


「ねえ、さっちゃん」

「うん?」


 僕はずっと、言い訳を探していた。

 労働の忙しさを言い訳にしてきた。

 年齢を言い訳にしてきた。

 相手の好意を言い訳にしてきた。

 タイミングがないことを言い訳にしてきた。

 万が一断られたら、という恐ろしさを言い訳にしてきた。

 人生を次のステージへと進める怖さを、言い訳にしてきた。


 でも、そこで思考を止め続けるわけにはいかない。

 思考を止めずに、将来を考えたら、ここで踏み出すべきなんだ。


 恋愛は、デスゲームだ。

 お互いを意識させ、空気感を合わせ、交際に至るゲーム。

 交際に至った後は、破局させないように。もしくは破局させたくなったらそちらへと舵を切るゲーム。

 行きつく先が結婚なんだとしたら、それは人生の墓場だと揶揄される。

 その表現が正しいかどうかは知らないけれど、それが既にデスゲームを表している。


 人生は死ぬまで続く人生はデスゲームだ


 だから、言い訳を探している暇なんて、一秒もない。




「結婚しよう」

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