おまけ 「アイス」

 雄一と舞が話を終えて、大樹と優美のところに戻って来たときである。


「大樹、アイス」

「はい」


 舞に言われて、大樹が差し出したのはアイシングバッグだった。


「は?」

「アイシングバッグ。ピッチャーもしたから冷やしておいた方が良いぞ」

「違くて、アイスは?」

「ん」


 そう言って、エコバッグを覗くと、ビニール袋に入った氷とスポドリとお茶がペットボトルだけが入っていて、アイスはない。


「好きなの飲めば?」

「違う。アイスクリームはどこかって聞いてる」

 すると大樹はふっと笑って言った。

「もしかして勘違いしている? アイスは『氷』のことでしょ。ちゃんと買ってきただろ?」


 にやりと笑う大樹に、舞は顔を真っ赤にする。


「あんたね~~~~~~~!!!! 図ったな!」

 舞は大樹のシャツの胸倉を両手で掴み、前後に揺する。

「いや、言われたもの買ってきただけだって」

 大樹はとぼけた笑みを浮かべた。

「私はアイスクリームを買って来いって言ったの! 言ったでしょ! 聞いてたでしょ!」

「いーや、アイスって言ったね」

「アイスもアイスクリームの意味でしょうがっ!」

 二人のやりとりを見ていた雄一は、オロオロしながら提案した。

「舞さん、俺がアイス買おうか?」

 すると彼女は怖い顔をして、「雄一は黙ってな!」と一蹴する。

「ハイ……」


 硬直する雄一を尻目に、優美が仲裁に割って入った。


「まあ、まあ、舞ちゃん怒りをおさめて。舞ちゃんの好きなアイスクリームは分かるけど、雄一君のが分からなかったから買って来なかっただけだよ」

「だからって、あの場面で『アイス買ってきた』って言わなくてもいーじゃん!」

「そこは、うん。大樹だから。舞ちゃんも知ってるでしょ、コイツがひねくれものだって」

「そうだよ、そうなんだけど‼ 雄一といるとき、そういうの一切見せないから忘れてたんだよ~~~~~‼」

 くっそー、と舞は悔しそうな顔を浮かべる。

「それ、どういうこと?」

 雄一が尋ねると、大樹はにこっと笑う。

「雄一は知らなくていい。俺はお前にはそんなことしないから」

「私にもするなよっ!」

「悔しかったら、優美のようにのらりくらりとかわすと良いよ」

 はははーと笑う大樹に、優美は額を押さえてため息をつく。

「また余計な一言を……」


 こうして雄一たちの絆がまた一つ深まった(?)のだった。


(完)

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☆KAC20237☆ 輝く笑顔 (桜井と瀬田⑥) 彩霞 @Pleiades_Yuri

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