【闇憑き姉妹シリーズⅦ】双子の部屋

深川我無

双子の部屋

達磨遊びに飽きた頃、輪廻と車輪カルマはピタリと同時に思い付く。


「そうだ!」

「そうだ!」


声をあげるとニヤリと笑い互いの唇に人差し指を押し当てた。


カーペットをくるくる巻いてフローリングを剥き出しに。机の引き出しガラガラ開けて白いチョークを取り出した。


「何するつもり?輪廻ちゃん」


「知ってるくせに!車輪ちゃん」


二人は笑顔で線を引く。

円と幾何学組み合わせ姿を現す魔法陣。


蝋燭灯して明かりは消して降霊術の始まりよ。


達磨を円の中に置き双子は笑って手を振った。


「暗い暗い穴の底」

「井戸の底搔くあなたはだあれ?」

「お外に出るにはどうするの?」

「そうだ誰かと交代しよう」


ずずっと達磨が闇に沈んだ。


ドキドキ成り行き見守る二人。


空気がざわつく。

カーテンが揺れてぬいぐるみ達が悲鳴をあげる。


ジーカタカタカタ

ジーカタカタカタ


糸車の回る音。


リリリリン

リリリリン


線の切れた黒電話のベルが鳴る。


ガチャ…


輪廻はそっと受話器を取った。


「もしもし?どなた?」


『そっくり酩酊の首吊りが御注文は死後のお埋葬で間違い死にますか?』


輪廻は笑い車輪に受話器を手渡した。


「もしもし?ご要件は?」


『信仰のある無しは畳に擦り切れ悲鳴の細切れ肉があると存じますか?』


顔を見合わせて目を丸くする。


『痒い…痒い…』

『今行く…』


受話器から繰り返す悲痛な声は、男の低い声を最期に途絶えた。


静寂が訪れガチャリと扉が開く音。


二人は抱き合い扉を見つめる。


扉の隙間から細い腕…


パチンと部屋に明かりがともる。


見ると真っ黒ワンピース。細い首に浮き出た血管。黒い瞳は夜の闇より暗かった。


「ママ…」

「ママ…」


二人はガタガタ震えて言った。


「いいわけ無用…!!」


パチン!パチン!


母のしゃもじは姉妹のお尻に跡を残す。


「うう…やっぱりママが一番怖いよ」

「うう…やっぱりママが一番怖いね」


涙を浮かべて顔を見合わせベッドに潜る。その夜は静かな夜だった。

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