君のいいわけ
涼
僕と僕
「こんなこと…言っても…仕方ないんだけど…」
そう君は言った。君は泣いている。僕は冷静だ。ただ言葉を紡ぐ力はない。
「こんなの…いいわけだってわかってる…でも…」
そう君は言う。君は大粒の涙を流す。僕は一気に冷静さを失う。言葉を紡ぐ力はない。
「でも…すきなの…」
そんなことを君は言う。君の次の言葉を僕は聴きたくはない。
君の次の言葉を僕はどこかで覚悟してはいる。
「…僕のことがすき?」
僕は君に問いかける。
「…うん」
君は少しゆっくり首を縦にうごかす。
「…僕のことはすき?」
僕は君に問いただす。
「…うん」
君は少しゆっくり首を縦にうごかした。
僕は少し誇らしげに空を仰ぐ。
僕はとても重たいこころもちで天を仰ぐ。
君とは入学して3ヶ月で付き合った。君はとても可愛くて性格なんて二の次だった。それは僕が悪い。
君とは入学して3ヶ月で付き合った。君はとても理知的で見た目なんて二の次だった。
それは僕も悪い。
僕は相談する相手に恵まれた。
僕は相談する相手を誤った。
「スマホと手紙とどっちが嬉しいかな」
「直接と友達仲介とどっちがいいかな」
僕は手紙にした。
僕は直接にした。
【手紙ありがとう。私で良ければつきあってください。】
手紙を出した次の日僕の下駄箱に入っていた。僕はひどく喜んだ。
「すきです。僕とつきあってください」
「私で良ければ…お願いします…」
その場で返事がもらえた。僕はとても嬉しかった。
「僕と」
「僕と」
『どっちがすき?』
声が重なる。少し幼い声と少し低音の声。
君は一人俯いて泣いている。君の次の言葉に僕は期待する。
君は一人佇んで涙を流している。君の次の言葉が僕は怖い。
「…すき…なの…」
君は言葉を詰まらせながら言う。
「…どっちも…」
君は泣きながらふざけたことを言う。
期待した僕は可哀想だ。
僕にもまだ希望はあるのか。
「ごめんね…
僕らは一卵性双生児だ。
君のいいわけ 涼 @m-amiya
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