語呂がよいことは、まぁ、認める。

ViVi

自分の名前を、わたしは嫌っている

 七星ななせナナという自分の名前を、わたしは嫌っている。

 語呂がよいことは、まぁ、認める。もし自分のものでなく、なにか適当なキャラクターの名前だったとしたら、そう悪くないのではないかとは、わたしも思うところだ。


 「自分の名前の由来を両親に訊いてこい」などという、きょうびにおいては「配慮に欠ける」と評されそうな(実際にわたしたちのときも後から問題になったらしい)課題を、小学校のときに出された。

 と言うべきか(まぁ言っておくべきだろう、くだんの問題になった、両親のいない同級生のことを思えば……)――わたしの両親は存命で、当時はまだ仲もわるくなかったので、訊くことができた。

 しかしそれがよくなかった。得られた答えは、まったくではなかった。不幸といってよかった。


 いわく、「幸運に恵まれるように」という答えだったのだ。


 ……字面だけを見ると、親が子に願うこととしては真っ当にも聞こえるだろうけれど、要点は、わたしの名前「ナナ」と、「幸運」の繋がりだ。

 それがだというのが、たまったものではなかった。


 ラッキーセブンだなんて、起源ルーツの甚だあやしい、歴史の浅い、ジンクス未満のなにかだ(――ということは、由来を聞いたあとに調べて知ったのだけど)。

 そんな名前をつけられたことが、すでにアンラッキーですらあると思っている。

 娘の幸福を願ってくれたこと自体はふつうにありがたいが、もうすこし慎重さがほしかった。


 それをきっかけに両親に対して反抗的な態度をとるようになってしまったので、すでにいくらか現実的な問題につながっているほどだ。(うん? それは名前じゃなくてわたしのせいだって? そういうツッコミをされるところまで含めて不幸だと! 思う!)


 そして、きわめつけに悪いのは、なにか不運なことがあるたび、それ自体と名前のことエピソードを思い出すのとで、二倍ダメージがくることだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

語呂がよいことは、まぁ、認める。 ViVi @vivi-shark

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ