777が幸運の印とは限らない
八百十三
アンラッキー777
ガシャコン、とアイスの缶コーヒーが落ちてくる音とともに、自動販売機の投入金額表示部分の数字が動き始める。
ピピピピ……という音とともに3つの数字がルーレットのように動いて、まず一つ7,続いてもう一つ、7。
「おっ」
俺、悠介は思わず声を上げた。これでもう一つ7が揃えば「当たり」だ。
そして最後の一つ、表示された数字は、7。
「やったー!!」
ピロピロ鳴りながら777が点滅し、同時に自動販売機の商品ボタンが全て点灯する。それを前にして俺は両手を突き上げた。
「え、マジで。これつまり、この中の好きな飲み物追加でもう一本、タダで貰えるってやつだよな」
そう、「当たり」だからここからもう一本、好きな飲み物を無料で貰えるのだ。どの飲み物を選ぼうか自動販売機の前で悩みながら、俺はにやけが止まらない。
「えーマジで。しかも『777』で揃うとか超ラッキーじゃん。俺ツイてるー」
ラッキーセブンという数字も大変に運がいい。これはもうツイてると言わずして何と言う、というやつである。
それはそれとして商品を選ばないとならない。俺は追加の飲み物を選び始める。
「じゃーまぁ、無難にこの辺で……」
そう言いながら俺は麦茶のペットボトルのボタンを押した。ちょうどこの後コンビニで買おうと思っていたから有り難い。
ガコン、という音とともに落ちてくるペットボトル。それを取り出すために俺は商品取り出し口に手を入れた。
「へっへ、ラッキ……うん?」
ペットボトルを取り出そうとした俺は目を見開いた。なんか、ボトルの形状が違う。取り出し口からペットボトルを取り出した俺は思わず声を漏らす。
「あれ、なんだこれ」
麦茶ではない。そもそも茶ですらない。
信じられない、入れ間違えられたんだろうと思うが、よりにもよってこんな甘ーい炭酸飲料と間違えるだなんて。俺は炭酸が嫌いなのに。
「オイ、マジかよ!? ここで別のが出てくるとか、ある!? しかもこんな、絶対飲みたくないやつとかさぁ」
俺は盛大に文句を言いながらペットボトルを手にしたままコーヒーの缶のプルタブを開けた。正直なところこれを飲むためにこうして自販機の前にいるのだ。
コーヒーをぐっと飲み干してから、大変に悩む俺である。折角出てきたこのメロンフロート、飲まないで捨てるのももったいないし誰かにあげる宛てもない。
「くそっ、出てきちまったもんはしょうがないか。とりあえず――」
仕方ないので自分で飲むしかない。ペットボトルの蓋をひねった瞬間、バシュッと音を立てて泡が大量に吹き出した。
「うわっ!?」
どうやら随分シェイクされていたようで、吹き出した泡と液体が俺の手を盛大に汚す。メロンフロートだから当然ベタつくわけで、俺の手はベトベトだ。
最悪というほかない。ここまで来たらラッキーどころかアンラッキーだ。
「えーマジで……ツイてねー……」
ぐっとメロンフロートを喉に流し込むと、俺はそっと液体が半分くらい残ったペットボトルをゴミ箱に放り込んだ。
公衆トイレはどこかにあっただろうか。俺は大変に憂鬱な気持ちになりながら、自販機の前を離れるのだった。
777が幸運の印とは限らない 八百十三 @HarutoK
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