マリとマリン 2in1 援
@tumarun
第1話 応
「カッセ! カッセ! あっかヘル」
大手の家電量販店の店頭である。キャノピーをもつ玄関に試聴用の大画面パネルモニターが並んでるいる。放映されているのは本場のベースボール。時差の関係で昼前の時間帯のライブ放送。
赤いヘルメットを被った選手がバッターボックスで素振りを一回。画面表示を見ると7回裏、得点は4対2。1.2塁に走者。ワンアウト3ボール2ストライク。
「カッセ、カッセ!」
「茉琳、本場の球場はそんな応援しなきよ」
「えー、静かにしてたら楽しくないじゃん」
「イニングの間に楽しむんだよ」
「ここは日本だし、いいのいいの」
相手ピッチャーが投げたのはインコースのボール。バッターは見送り、キャッチーがファンブルしていた。ワンアウト満塁になった。
『ここはチャンスとなりました。ラッキーセブンとあまり言わなくてなりましたが、ここは逆転のポイントになるでしょう』
現地からの解説が字幕入と音声で流れている。
「ねえ翔。ラッキーセブンってなに? 幸運の番号じゃないの?」
「それね、野球の7回の攻撃の時は点が取りやすいし、奇蹟みたいなことも起きやすいからね」
「それで幸運の7」
「seventhの7回」
「へぇー」
「翔はどうだったの?」
「俺の時は……」
翔は目を泳がせた。小学生のソフトボールで同じような状況に翔は右のバッターボックスに立っていた。左投げのピッチャーが投げたのはインコース、自分に当たると勘違いした翔はバットを振ってしまう。空振り、そしてボールは翔の脇腹に当たってしまい、キャッチーが後逸してしまう。結局ボールデッドになり塁は進まず、ワンアウトを献上するだけだった。後続も倒れて無得点。試合にも負けてしまった。あの時のベンチの雰囲気と視線を思い出して、翔は表情を曇らせた。
「俺にとってはアンラッキー7だったよなぁ」
と呟いてしまう。その時以降、ソフトボールにも野球も関わらないようになってしまった。
「ドンマイだよ! か、け、る」
(私はその時の翔を知っている。見ていたから。あの時の顔は寂しそうだった。だから)
茉琳が周囲を微塵にも気にせず、メガホンを振り回して声を出している。
「カッセ! カッセ! かっ飛ばせぇ!か、け、る」
(いつでも応援してあげる)
テレビの中の試合は、次の日本人バッターがタイムリーヒットを打って同点。次の回に逆転した。
「「カッセ! カッセ! あっかヘル」」
翔も茉琳に合わせて応援して、店の店長に2人して絞られた。
マリとマリン 2in1 援 @tumarun
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