精神の転移が別の肉体に宿り、断片的な記憶のピースを繋ぎ合わせていきます。張り巡らされた伏線も丁寧に回収され、次第に組み合わされていくジグソーパズルを完成させていく、そんなプロセスを楽しめる印象を受けます。 登場人物たちの特徴的な語尾も、活字を捉える瞳奥の耳朶を打ちながら、それでいて奏でる音としてアレコレと想像の幅を広げさせてくれる点も加筆したいです。 過去と現在の描写が重層的に織り成され、去来する想いが心の機微となり、その移ろいに幸福を与えたい、そんな温かく見守りたい気持ちになれる小説です。
奇跡のような転移の話。記憶の断片が一つずつ、つなぎ合わさって真実を映し出す鏡へと変貌する。物語の端々に丁寧に伏線を張り巡らせ、やがて華麗に回収されて行く。最初のブランコ、砂場のシーンも、今、思えば幸福の絶頂だ。二人のこれからに幸あれ。