アンラッキー7の怪人

橋本洋一

アンラッキー7の怪人

 俺が通う私立裏飯高校には学校の怪談――俗に七不思議が存在する。

 

 『永久の一年生』

 『そぞろ歩く二宮金次郎』

 『三つ子地蔵』

 『四階トイレの花子さん』

 『五号棟のベートーベン』

 『六面犬』


 これらの六つの怪談を攻略した、空前絶後の生徒会長がいる。

 名を――真我里まがりれい

 彼女の下にいる、副会長、会計、書記、そして庶務の俺は残りの七つ目の怪談、『アンラッキー7の怪人』を攻略しようとしていた――


「副会長。アンラッキー7の怪人について確認してくれる?」


 玲会長は副会長に訊ねた――メガネをくいっと上げた副会長は「読み上げます」と手元の資料を読む。


「裏飯高校の敷地内で777-7777と電話をかけると、アンラッキー7の怪人は電話に出る。そして六つの質問になんでも正しく答えてくれるが、その後の怪人からの質問に答えられないと……死ぬ」


 それを聞いたロリ体型の会計が「怖いですぅ……」といい子ぶりやがった。

 俺は会計が腹黒いことを知っていた。

 加えて書記の野郎が「さっそく、かけてみますか?」と言い出した。


 時刻は夕暮れ――逢魔が時である。

 シチュエーションとしては申し分ない。

 玲会長は「タカシ。覚悟はいいかしら?」と俺に問う。


「ええまあ……」

「一番チキンなタカシが平気ならみんな大丈夫ね」


 この野郎……

 玲会長はあっさりと電話をかけた。

 しばらく待っていると、スピーカーにしたスマホから声がした。


『私は、アンラッキー7の怪人……質問をどうぞ……』

「副会長の好みを教えなさい」


 玲会長以外はずっこけた。

 っておいおい! 何聞いてんだよ!


「か、会長! 何を――」

『熟女が好きです。特に三十代後半が好みです』


 それを聞いた会計が「オラァアアア!」と副会長にラリアットを食らわせる。

 副会長と会計は幼馴染で、会計が猛アタックしていたのだった。


「私が、何度アプローチしても断ってたのはそういうこと!?」

「ごべんなざい! ごべんなざい!」


 なおも追撃する会計。

 俺と書記は助けを求める副会長の視線を無視した。


「次。タカシの絶対に人に言えない秘密は?」

「はあ!? ふざけんなよ!」

『未だに寝小便してしまうことです』

「こらあああああ! 怪人答えるんじゃあねえ!」


 玲会長が次の質問をする前に、俺と書記が二人がかりでスマホを奪おうとする。

 しかし悲しいかな、玲会長の前では無力に等しい。

 二人ともぼこぼこにされた挙句、それぞれオットマンと椅子にされてしまった。


「書記の死にたくなるような過去は?」

『一目惚れした子が同性だったことです』

「ぎゃあああああああ!」


 その後、四つ目と五つ目の問いは受験勉強に関する、真面目な問いだ。

 俺たちが最後に望むのは、怪人からの問いに玲会長が答えられないことだった。


『六つ目の質問をどうぞ』

「次のあなたの質問の答えを教えて」

『……火曜日です』


 シーンと静まり返る生徒会室。

 一拍遅れて怪人が言う。


『では私からの質問です。2348年の――』

「火曜日です」

『チッ。正解です』


 その後、通話は切れてしまった。

 玲会長はにっこりと笑って言う。


「これで七不思議は解決ね! みんなにも対処法言ってあげて!」


 ――納得いかねえ!

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アンラッキー7の怪人 橋本洋一 @hashimotoyoichi

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