(アン)ラッキーガイ・セブン

紫陽_凛

その日彼は遅刻をした

 ニューカジノ「ユグドラシル」の「クイーン」って言えば有名だ。白皙はくせきの美貌に青い瞳、グラマラスなボディにバニーコスチュームをまとった美しい女ディーラーさ。しかもエルフ族ときている。彼女はポーカーで負けたことがないんだ。勝利の女神が彼女の背後バックについてるって有名だね。

 腕に覚えのある連中が何人も彼女にチャレンジしたけど、やっぱり早く抜けたほうが損が少なくて済むね。彼女に挑み続けたが最後、骨の髄までむしられて終わりさ。引き際を見極めた奴がいちばんいい思いをするんだよ。はは、男と女の関係にも似てるかな。

 さて、今宵の無謀な奴らを紹介しよう。ゴブリン族の男がふたりと、ヒューマン族の小男と……おっと。ゴブリン族のやつ、早くも怖気おじけづいたな。

 あっという間に、「クイーン」とヒューマンの「サシ」になっちまった。


 七郎ナナオは手元のカードを見て、そしてクイーンの手札を見た。開示オープンされた1枚は、【♡Q】クイーンオブハート。さすが、通り名は伊達ではない。他二人のプレイヤーは辞退し、掛けチップを根こそぎ持っていかれてしまった。続投コールするのは七郎のみ。最初の掛け金の倍額になるようチップを乗せて、クイーンを見上げる。勝負を受けた女神はうっそりと微笑み、チップの山を丁寧に整えた。余裕だ。

 しかし、七郎にも勝算がある。手札の五枚中、四枚が【7】セブン。7のフォーカードフォー・オブ・ア・カインド

(さすがにこれより大きな役は出まい)

 七郎は7という数字が好きだ。よく、「ラッキーセブン」という。何より七郎自身が、七月七日七時七分に生まれた男である。

(うなれ、俺のフォーカード!)

 お互いのカードが開示される。

「ロッ……!?」

 言葉の続きを言えぬまま、七郎は目覚めた。


 目覚まし時計は床に転がっていた。7を指し示す短針は少しずれている。七郎は瞬きをして、ベッドから跳ね起きた。

 頭を掻きむしりながら支度をし、朝食も取らずにアパートを出る。

「くそ、負けた……!」

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(アン)ラッキーガイ・セブン 紫陽_凛 @syw_rin

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