老婆と道化師は手の平で転がされる
!~よたみてい書
薄暗い室内での危ない遊び
「50枚のうち、ジョーカーは最後手札に持っていたらいけないのよね?」
初めてだから何もわからないので、ちょくちょく質問をぶつけているけれど、他の参加者に説明が面倒くさいと思われていないか心配だ。
なんとかわたしのこの笑顔でみんなのご機嫌を取れていたらいいのだけど。
するとわたしの右隣前に座っていたヨハンが茶髪を揺らしながら軽く頷いて反応した。
「そうそう。それで同じ数字やアルファベットが組になったカードをテーブルの中央に置いていってね」
「えっと、例えば5と5が揃ったら手札から机に捨てる、と」
わたしが手札を睨めつけていると、左隣前に座っている地味な見た目をした男性が口を開く。
「『魔女覚醒』のルールはそれだけじゃないよ」
テーブルをはさんで正面に座っている冴えない男性も会話に割って入ってきた。
「高貴な格好をした老婆が描かれたカードも残してはいけない。そして老婆とジョーカーが出会ってしまい、二人きりになった時」
ヨハンが口角をニッと上げながら語気を強めた。
「老婆が魔女に覚醒し、災いに巻き込まれる」
実際にその現場に遭遇したらと考えただけで体が反応してしまい、体が一瞬震えた。
地味な男性は気味の悪い笑顔を浮かべながら会話を繋げる。
「最後までその二人を持ち続け、魔女を覚醒させてしまった人は負け。パンを三人分支払うことになるよ」
想像した悲しい未来を振り払うかのように首をふるふるして振り払っていると、冴えない男性がニタニタしながら呟く。
「さあジェシカちゃん、始めるよ。準備はいいかい?」
コクコクと首肯して言葉に出さずに伝える。
そして、数分ほど時計回りに相手の手札カード一枚ずつ引き続けていくと。
わたしの眼下には数字の7と共に描かれた老婆の姿が。
他の三人の手札はどんな感じだろうと確認するけど、ヨハン以外は手に何も持っていない。
ヨハンその申し訳なさそうな顔をやめて。
老婆と道化師は手の平で転がされる !~よたみてい書 @kaitemitayo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます