ギャングスター~コットンとシュガーとベル~

豆腐数

第1話

 ギャングのアジト……それは、とある町のコットン・ソースパン邸に存在する。本邸の隅っこにある大きくて古い蔵、その中が仲間達との大切なたまり場だ。


「よう、ベル」


 薄暗い部屋の中、怪しげな色の液体を飲み干しつつ、コットンがやって来た仲間のベルに声をかけた。しかしベルは「よいしょ、よいしょ」とドアを開けるのに忙しい。古いので立て付けが悪くなっているのだ。クラスの中でも小柄なほうである、小学二年生の鈴木宗太君が一人で開けるのはなかなか難しい。


「シュガーはどうした?」

「あいつは……ファミリーの手伝いに出てる」


 彼らと同い年、同じクラスの佐藤君のおうちは大人気の定食屋さん。忙しい時は自ら名乗り出てお手伝いをしているのだ。


 コットンはポケットから取り出したココアシガレットをパキッと齧り、


「そうか……あいつも忙しいからな」


 どこか寂しげに呟いた。コットン──渡辺次郎君はまあまあいいとこの次男坊。「ねえねえあそこの蔵使って遊んでいい?」というワガママも、近所じゃ怖いと有名なおじいちゃんにデレデレっとした笑顔で許されているのだった。


「まあ掛けろ、いいブツ仕入れて来てるぜ」

「わーダンボールいっぱいメロンソーダの缶ジュースみっしりじゃん! やっぱ鍋っちゃんちすげーよ」


 メロンソーダってなんで1・5リットルペットボトルで売ってないんでしょうね。


「ゲームでもすっか。名付けてアンラッキー・セブン」


 高そうだけどホコリ被っていたテーブル(渡辺君が一生懸命拭いた)に、伏せた紙コップを七つ並べる。


「一つだけココアシガレットが入ってる。当てれば商品はお前のだ。残りの六つは──」

「あっ、本物のタバコじゃん、鍋っちゃんいっけねーんだ、先生に言ったろ!」

「父さんハイライト派なのに、無頓着な母さんが適当にセブンスター買ってきちゃったんだよなー」

「アンラッキーなの鍋っちゃんの父ちゃんじゃん」

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