悲観論者

ヌリカベ

悲観論者

 だいたいに措いて俺は運が悪い。

 ジャムを塗った食パンを落とすと、まず間違いなくジャムを塗った方を下にして床に落ちる。


 この間も心地よく年末を迎えようと思い立ち久々に洗車に出かけたのだが、その帰り道に土砂降りのにわか雨に遭遇した。

 翌日は商店街で年末の買い物をして福引券を九枚も貰った。

 勇んで福引をしたのだが七回連続してハズレのポケットティッシュしか当たらなかった。


 普通なら七回も回せば一~二回は下から二番目の八等くらい当たりそなものなのにきざしも見えない。

 あきらめて時間を空けて又来ようと思って帰り掛けると、大きな鐘の音が響いた。

 俺の二つ後ろにいた奴が一等を引き当てたのだ。

 何がラッキーセブンだ!

 七回目は大ハズレ! あきらめたら九回目で大当たりだ!


 二つ後ろの奴が引いたのが特等では無く一等だったのがせめてもの救いの様に思えてしまうが、だからと言って俺が九回続けて回したところでまず絶対に当たりは出ないだろう。

 何しろ俺はついて無いのだから。


 極め付きが年明けに行ったコンビニの懸賞キャンペーンだ。

 その名も”ラッキー7キャンペーン”。

 コンビニの店名とキャンペーン商品の炭酸水になぞらえたのであろう安直なネーミングだった。

 ポイントシールが溜まって懸賞ハガキが一杯になってしまった。


 当たる訳がない。

 そもそもほぼ確実に外れるであろう懸賞の応募ハガキに、切手を買って張り付けて郵送すること自体が金の無駄である。

 そう思うなら毎日炭酸水を買って7のマークの懸賞シールなど貯めなければ良いと思うのだが、そこは人のさがと言うものだろう。


 忌々いまいましいので後輩にハガキをくれてやったらなんとスキーツアーのチケットを当てやがった。

 悔しいが恐縮する後輩に大人の余裕を見せて笑顔で送り出してやった。

 ”ラッキーでした。お土産を買ってきます”と告げる後輩に、腹の中で俺にとってはアンラッキー7キャンペーンだよと悪態をつく。


 はしゃぎ過ぎた後輩はそのツアーでアイスバーンにスノボごと突っ込んで骨折して帰って来た。

 見舞いに行くと後輩が俺に頭を掻きながら礼を言って来た。


「すみません。先輩のいつものラッキーを俺が潰してしまって。折角せっかく先輩のラッキーにあやかれたと思ったのに、俺が貰うとアンラッキー7に成っちまいましたね。いつも羨ましかったんですよ。美人の奥さんは居るし、課長にも目をかけられているし。先輩はこの間のプレゼンでも…」

 この後輩にとっては俺はラッキーな男に見えるらしい。

 隣の芝は青いとよく言われるが、結局自分が思うほど不幸でも無ければ他人が思うほどラッキーでも無い。

 世の中そんなものなんだろうなと思いながら、今日は後輩の愚痴を聞いてやる事にした。

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悲観論者 ヌリカベ @nurikabe-yamato

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