金のアンラッキー7、銀のアンラッキー7

やまたふ

金のアンラッキー7、銀のアンラッキー7

 アンラッキー7。

 それは、持つものに不運を呼び寄せる呪いのアイテム。




 あるところに、とても真面目な会社員がいました。


 しかし、その会社員はアンラッキー7の効果により散々な毎日を送っています。

 PCは壊れるわ、データは消えるわ、ひどいクレーマーに怒られるわ、etc.


「くそ、どうして僕ばっかりこんな目に……こんなもの捨ててやる!」


 ポイッ……ボチャンッ!


 放り投げたアンラッキー7は、池に落ちました。


 けれど彼は知っています。

 アンラッキー7は呪いのアイテム。いくら捨てても必ず手元に戻ってくると。試したのだって一度や二度ではありません。


 沈みゆくアンラッキー7を眺めながら、会社員は虚しい気持ちになりました。


 ですが……。


 パァァアアアッ――。


 そのときです。

 突如として光り出した水面から、とても美しい泉の女神が現れたのです。


「なっ……!?」


 驚く会社員に、女神はこう問いかけました。


「あなたが落としたのは、この金のアンラッキー7ですか? それとも、銀のアンラッキー7ですか?」


 見ると、女神の右手には不運度10倍増しの金のアンラッキー7、左手には不運度5倍増しの銀のアンラッキー7が握られています。


 会社員は思いました。


(どっちも死ぬほどいらねぇ……)


 なのでこう答えました。


「いいえ、どちらでもありません。僕が落としたのは、ただのアンラッキー7です」


 会社員の答えを聞いた女神は、嬉しそうにほほ笑みます。


「まあ。あなたは正直者ですね。ご褒美に、すべてのアンラッキー7を差し上げましょう」


 会社員は女神から、金、銀、ノーマルのアンラッキー7を受け取りました。


「……………………」




「――なんてことがあったんだよ」


 翌日、会社員は同僚に昨日起きた出来事を話しました。

 すると、同じくアンラッキー7の保有者である同僚は言いました。


「馬鹿だなお前。それはチャンスだったのに」

「チャンス?」

「それって『金の斧、銀の斧』のお話と丸っきり同じじゃないか。だったら、お前は嘘つけばよかったんだ。そうしたら何も手に入らない。つまり、アンラッキー7とおさらばできたのに」

「そうか、その手があったか」

「じゃ、俺はきっちりやらせてもらうよ」

「ぐぬぬ」


 同僚は早速池に向かうと、わざと自分のアンラッキー7を落としました。


 ボチャーンッ!


 と、女神が再び現れこう問いかけました。


「あなたが落としたのは、金のアンラッキー7ですか? それとも、銀のアンラッキー7ですか?」


 同僚は待ってましたとばかりに答えます。


「金のアンラッキー7です! 俺は金のアンラッキー7を落としました!」


 すると、女神はにっこり微笑んで言いました。


「そうですか。ではどうぞ」


 そうして、女神は同僚に金のアンラッキー7を渡して池の中へ戻っていきました。


「……………………」




 アンラッキー7。

 それは、持つものに不運を呼び寄せる呪いのアイテム。


 逃れることは、できません。

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