平民地区で人気の占い師

@mia

第1話

 平民地区によく当たると人気の占い師がいた。

 占いをする机の端に飼い猫をはべらせていた。端ではなく、占いをさせないよう机の真ん中に寝そべっていることもあった。

 でも、客たちは笑って許していた。

 占いの仕方は色々あって、水晶球を覗き込んだり、カードをめくったり、細長い棒をじゃらじゃらさせたり、一輪の花の花びらをむしったり、履物を放り投げたり、猫の仕草を読み取ったり、占いはその時によって様々だった。

 占い師が人気なのはよく当たるというだけではなく、親身になって話を聞いてくれているという事にもあった。

 若い男女は、恋愛結婚。少し年齢が上がると仕事家庭の事。もっと年齢が上がると健康のことなど、年齢によって依頼内容が偏っていたが、そのどれにでも占い師は「悩み事相談なら神殿の神官や役所の相談員に相談しな」などと言いつつも、親身になって占っていた。


 このところ占いの依頼が年齢問わず、一つの内容になってきた。

「この国にいて大丈夫なのか。他の国に移った方がいいのか」

 そんな依頼が増えていた。

 将来の王様だと思われていた第一王子が病気により廃嫡になってしまったり、魔獣討伐隊の隊員が行方不明になったり、平民地区からそれほど離れていないが治安がいいはずの貴族地区にある貴族の屋敷が賊に襲われそうになったり、不穏な事が立て続けに起きた。

 占い師は客がいなくなった時に、この国の未来を占ってみた。

 カードをめくると7が出た。

 7は本来ラッキー7と言って、縁起のいい数字だった。

 だが、今めくった7は上下逆のアンラッキー7となっていた。

 占い師は結果を見て、この国の未来はあまり明るくなさそうだと感じた。

 ただ、占いをしに来た客たちの結果は、それほど悪くなかった。

 国に何かあっても、平民には影響がないのかもしれない。

 この国が無くなり別の国になっても、平民はそこで生きていかなければならないのだから。

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