俺と7の物語【KAC20236アンラッキー7】

羽弦トリス

悪魔の数字……7

俺の名は高橋圭介32歳だ。

まだ、結婚はおろか彼女さえもいない。後輩と休日ツーリングを楽しむのが趣味である。

このバイク同好会には若いカップルも所属しており、段々平均年齢が下がっていくのがうれしい。

俺は仲間の中山に電話した。

「もしもし、中山君?」

「そ~だよ。どうした?オッサン」

中山は23歳の社会人1年生だ。

「明日のツーリング、ペニーズに朝、7時集合な?」

「えぇ、オッサン朝、早すぎるよ~」

「俺が食費もガス代もおごってやるから、頼んだよ。他の連中にも伝えておいてくれよ!」

「はーい」

中山は迷惑そうであった。


翌日、朝7時。

「やぁ~、みんなおはよう。今、丁度7時だ。7時7分に出発だ!」

「高橋さん、そんなに7にこだわらなくても。ナンバーも7だし」

中山が愚痴を言う。

「馬鹿者!おれは、7月7日7時77分に産まれたんだよっ!」

「77分?」

「あぁ~そうだ」

「馬鹿はほっとこ。さっ、出るよ!」

中山は若いメンバーに、スタートする合図をした。

まだ、7時5分だった。


【へっ、まだ7の威力を知らんガキ達だぜ。ま、俺は7分に出発だ。アイツらには直ぐに追い付くはずだ】


俺は、ゆっくりとスタートした。

高速道路に乗ると、休日が関係あるのか空いていた。

走行車線を飛ばしていると、直ぐに中山達の背中が見えた。

その時だっ!


【ウグッ!……ウンコがしたい】

俺は、追い越し車線を走り中山の後ろに追い付き、次のサービスエリアに寄るように伝えようとした。

10分間程、追い越し車線を走っていると、


『ウゥ~ウゥ~、前のバイクの方、ゆっくり左に寄りなさい!』


【し、しまった!追い越し車線を忘れていた。見逃してもらおう、次のサービスエリアまで】


チッカチッカチッカ

ウィンカーを左に付け、停車した。

「お兄さん、ダメだよ!追い越し車線ばっかり走っちゃ。走行車線違反だからね」

「お、お巡りさん。次のサービスエリアでお願い出来ませんか?」

「ダメダメ、ウソついちゃ。罪が重くなるよ!」

「お巡りさん信じて下さい!俺はウンコがしたいんです」

「早く、切符切るからもうちょい、我慢してねぇ。免許証見せて」


俺は、尻ポケットから財布を取り出し、免許証を見せた。


【ググノァッ!い、いかん。漏らすのは時間の問題だ!早くしろ!警察官の薄情者!】


「お兄さん、ゴールド免許証じゃん。何で、違反したの?」

「ですから、ウンコがしたくて……」

「あぁ~、分かった分かった。みんな、違反者は時間がない!とか、トイレ行きたい!って、言い訳するんだよねぇ」

「それは、どうでもいいですから、は、早くしてくださいっっ!」

警察官は何か不審に感じた。

「お兄さん、手荷物検査するね。リュックの中身見せて!」

俺は、リュックも後部座席の荷物も見せた。

警察官の検査はようやく終わった。


……俺も終わった。俺の分身はまるごと1本出ていた。

時計を見ると、7時57分だった。


俺は次の出口で、高速道路を降りた。

直ぐに電話があった。

「どうしたの?今、どこ?」

「……下の道。高速道路降りた」

「何で?」

「体調が悪くてな」

「残念だが、仕方ないね高橋さん。ラッキー7じゃなくて、アンラッキー7だな。帰りにウンコ漏らさないでよ!」

「分かった。じゃ、切るぞ」


俺は自然と涙を流していた。


終わり

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俺と7の物語【KAC20236アンラッキー7】 羽弦トリス @September-0919

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