U.N.Lucky 7th

U.N.Lucky 7th

　おっさん、知ってるかい。夏の夜、風が止まって蒸し暑くてどうしても寝られない時どうすりゃいいか。

　道路わきで横になるといいんだ。車が通るたびに風が来る。それに、時々小銭が降ってくる。

　だから、俺たちは縄張りを決めた。争わないように。平和って大切なんだろ？

　俺の居場所はここ、そこの壁に『Lucky 7th』ってあるのが目印。なんの店か知らないけど、靴を履いた奴らが吸い込まれてく。いい歳した男と女、男と男、女と女、不明と不明がぐにゃぐにゃ、べたべたしてる。ここの暮らしが長い奴が何してるのか教えてくれたけど信じられなかった。嘘に決まってる……よな？

　そうやってる内に季節がぐるっとまわる。不運な奴はいなくなる。俺は幸運だから生き延びてここにいる。居場所もそのまま。でも、年が明けたころから通りすぎて風を送ってくる車と乗ってる奴の感じが変わった。いっぱいで、あふれそうになってて、みんな銃を持ってる。それからでっかいくせに小さい窓しかなくて、大砲をつけた缶詰みたいな車も見た。まあ、送られてくる風は同じだったから気にしなかった。

　怖いかって？　そりゃ怖いさ。けど、ここで暮らすなら飼い慣らさなきゃ。そうだ、おっさんにも後で教えてやる。怖いって心をおとなしくさせる餌があるのさ。ちょっと銭がいるけど、持ってるよな。

　そうそう、変わったことがもう一つ。壁の『Lucky 7th』に誰かが新しい紙を貼りつけていった。そこらじゅうにもあるよな。『U.N.』って何の意味か分からないけど、全体で『U.N.Lucky 7th』って読めるんで、字の分かる連中で笑った。いい意味じゃないけど、ここがこれ以上落ちるはずない。だから、底を打って反転して上がるんじゃないかって話してる。

　ところで、おっさんよ。うまく撮れてっか。ネットのニュースだろ？　俺、スターになれるかな。写真撮るなら小遣いくれよな。