〇ッキー〇ウス

常陸乃ひかる

のーわんだー

 世間でラッキーと言われる数字と、個人のラッキーナンバーは違う。

 世間では1から1000までの数字をランダムに選んだ時、『777』が出る確率も、『313』が出る確率も同じだ。

 世間では会計が777円だと嬉しくなる。

 世間では令和7年の7月7日に生まれる子は縁起が良いと言われる。

 どの数字がアンラッキーかなんて偶然に過ぎず、それを気にして生きている世間の人間は逆に幸せである。世間では、ChatGPTに『アンラッキー7の物語を書いて』と頼んでも、要領を得ない内容が出来上がるほど関心を持たれていない。

 そんな世間は、あと数日で新年を迎える。

 某スマートシティの都市開発に携わり、プロジェクトマネージャーをしている男――ミナヅキ。42歳。既婚、子持ち。

「PMお疲れさまです。あすで仕事納めですね」

「最後だからって気を抜くなよ。じゃお疲れ」

 高給取りの彼はに会うため、仕事帰りにへと向かった。その人物はいつも笑顔で、優しくハグしてくれる尊い存在だ。

 再開発地区の場末で営業している、『Luckyラッキー Houseハウス』という、完全会員制の異世界ワンダーランドに入店した彼は――

「ミナヅキちゃん、今年最後だからゲームしよ。二個サイコロ振って、合計が偶数だったらアレを、奇数が出たらビンタを、その回数だけシてあげまちゅね」

「デュフフ! ぽくゲームしゅきぃ!」

 全裸よりもはしたない恰好をした人物キャストを膝に乗せ、破顔していた。

 部下を叱責する面影もない都市開発PMは、自らを開発するかのように、なまめかしいエレクトリカルパレードが行われる店の片隅で、無垢にさいを振った。

 テーブルの上で転がったそれは、2と5を示し――

「残念、7でしたあ!」

「ジュンちゃんにぶたれちゃうぅ! ハハッ☆」

 性癖の化身を担うスマートシティのアングラで、アンラッキーな音を7回奏でた。

 世間では、木枯らしが不憫ふびんそうに鳴く。道理で寒いわけだ。


                                   了

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〇ッキー〇ウス 常陸乃ひかる @consan123

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