七番目とりんご飴
つくも せんぺい
七は神様と恋にかかればただの数字だったという話
ラッキーナンバーという語りから始まる物語のなんと多いことか!
嘆かわしい!
……なんて、自分のこのまだ短い人生を棚に上げて言ってみる。
誰に言ってるのかなんて分かり切っている。そこで手を止め足を止めた
聞いてください神さま。
私は幸と言います。この名前、どう思いますか? 両親がなんでこの名前にしたと思いますか?
幸せに過ごせるように? 幸せを与えられるように? そうですよね。普通聞いたらそう思いますよね。
でも、私は常々思うんです。私が幸って名前なのは、七番目の子どもで、ラッキーセブンから思いついたんじゃないかって。まっ、これで良いかなって。
聞いてますか神さま、ちゃんと聞いていますか?
私ラッキーセブンって信じられないんですよ。七番目って、可愛がられて良いねって思いますか?
なら神さまも七人集まって、食事してみたら良いですよ。
え? コース料理?
甘えてますね神さま。大皿に決まっているじゃないですか。
サバイバル上等ですよ神さま。
でも神さまはみんな大人だし、神さまだから大丈夫かな? 私は一番チビだったから、唐揚げも皮のカケラだったし、エビフライは尻尾でしたよ神さま。
あのテレビに良くある動物の赤ちゃんがママのおっぱい飲む映像。わかります? 端っこの小さい子。あれ私です。
テレビない? なら私がちゃんと大人になれたら寄贈してあげますよ神さま。だからいっぱいご利益くださいね神さま。
いま着てる洋服だって全部お下がりです神さま。
サイズって分かりますか?
私Sサイズなのに、これMなんです。たまにLサイズもあります。あの巨人ども、男三人女三人もバランス良く上に居るのに一人も私に合わせないんですよ神さま。
ホントに兄妹なんですか? 神さま。
あ、やっぱり嘘です。今の取り消します。
でもどう考えてもアンラッキーセブンですよね神さま。
ねぇ神さま……。
「もしもーし」
「……」
「ほら、サチあんた信心深いなら褒めるけど、絶対違うでしょ。お参り長過ぎ」
「だって」
「並び始める前にまたりんご飴のお兄さん見たいって言ったのアンタでしょーが! 行くよ」
神さま近所の友だちのイチカが厳しいです。でもイチカが居ないとあの屋台に行けないから、長女のしっかり者に頼んでついて来てもらいました。
週末だけある神社の屋台にある、りんご飴屋さんのお兄さんが、すっごくかっこいいんです神さま。
お参りが
いや、そんな話は後にしてもらって良いですか神さま。
「こんにちは! また来ました」
「こんにちは、ホントだ。近所なの?」
イチカのメンタル強過ぎませんか?
お兄さんの笑顔でもう話せないんですけど。
「アタシ、イチカっていいます。この子サチ。学校そこの」
「ホントだ近いね。イチカちゃんはしっかりしてるから、お姉ちゃん?」
「長女でイチカですよ、覚えやすいでしょ? この子すごいんですよ? 七番目! ラッキーセブン!」
イチカお姉さまそれはあんまりじゃございませんか? けっこう気にしながら自虐ネタにしてるんですよ。
「僕も同じだよ、珍しい! じゃあもしかしてナナちゃんっていうの?」
……神さま?
何かしてくれました?
「いえ、……サチです」
「幸せって字? 七人目なのにちゃんと考えてもらってるんだね。僕なんて七之助だよ。でもサッちゃん小柄だし、兄妹多いとお菓子とかなかなか食べられなかったりしない? はい、おまけ」
……神さま? 七之助さんが笑っておまけを。
手まで触れたんですけど。神さま?
私お賽銭、いくら入れましたっけ神さま?
「あっ、サチずるい。お兄さんアタシには?」
「これは七番目仲間のサッちゃんに特別」
「だってよ?」
「……ありがとうございます」
神さまーーーーー!!!
「イチカ」
「なに?」
「ちょっとお参りいってくる」
「なんで?!」
神さまにお礼言わなくちゃいけませんよね!
あと、両親に幸ってつけてくれてありがとうって。
「イチカ」
「今度はなに?」
「お賽銭貸して」
「バカなの? 罰当たりなの?」
だって七番目はお小遣いも少ないんです神さま。だからテレビもまだ待ってくださいね? ご利益だとしても気が早過ぎますからね神さま。
あ、このおまけを入れろってことですか神さま、それはさすがにダメですよ神さま。
一生懸命お参りしますから、神さまも私も幸せになれますように!
七番目とりんご飴 つくも せんぺい @tukumo-senpei
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます