出会いの軌跡

@aira0011

短編です。

私の名前はえみ。



小さい頃は恥ずかしがりで友達が中々出来なかった。



そんな私を救ってくれたのがゆい。



私にとってゆいは幼なじみで一番大切な友達。



いつも笑顔で明るく、社交的で誰とでも仲良くなれる、そんな人。



そんなゆいに憧れていた。



私はゆい以外の人とはあまり話せず、いつもゆいの側について歩いていた。



そんなゆいには好きな人がいる。



ゆいの幼なじみで2つ先輩。



私はその先輩が苦手。



見た目も恐いし、悪い噂も聞く。



でもゆいの前では凄く優しく、いつも笑顔だった。



ゆいは先輩と一緒に居ると、とても幸せそうで、それを見ている私も幸せな気持ちになれた。



でもゆいは自分の気持ちを隠すように先輩を「お兄ちゃん」と呼んでいた。



そんな2人だけど、いつか2人は恋人になって幸せになる。



ずっとそう思っていた。







中学に上がった頃、私は相変わらずゆいとしか親しく出来なかった。



ゆいはそんな私の側に居てくれ、色んな所に連れ出してくれた。



そんなある日、家について宿題をしていた時にゆいから電話。



いつもは夜に電話がくるので珍しいと思いながらも電話にでてみる。



「ゆい、どうしたのー?」



返事がない。



「ゆい?」



するとゆいが



「助けて・・・」



泣いているのがすぐに分かった。



ゆいが泣いているのを見た事が無かったのでとにかく慌てて家から飛び出し


「今何処に居るの?」と聞いてそこへ向かった。



向かった先はゆいと先輩がいつも話をしている公園。



ゆいはそこで膝を付き、うずくまっていた。



慌てて手をかして、ベンチに座らせ、ゆいが話をしてくれるまで待っていた。



暫くすると、ゆいは少しずつ話をしてくれた。



ゆいは今日も先輩と待ち合わせをして、ここで話をしていたそうだ。



すると先輩が



「俺今日告白されて、その子と付き合う事にした。だから彼女が心配するかもしれないから、これからは会わないようにしよう」



そう言われた。



それを聞いたゆいは咄嗟に



「必ず幸せになって。私、ずっと応援してるから」



そう言ってしまった。



先輩と別れた後足が震えてそこから動けなくなって、私に連絡たしてきたのだ。



私は何も言えず、ただゆいを抱き締めることしか出来なかった。。。



そしてゆいをお家まで送り、家に帰りながら、私は嫌な事ばかり頭に浮かんでいた。



もしかしたらゆいはこのまま居なくなってしまうんじゃないかと。。。



そんな考えを振り払うように、きっと時間が解決してくれる。



時間が経てばいつものゆいに戻ってくれる。



そう思うようにしてた。。。



次の日の朝、ゆいの家に向かった。



ゆいのお母さんは



「昨日からご飯も食べずに部屋から出てこないのよ。今もえみちゃんが迎えに来てるって伝えたんだけどねぇ」



私は仕方なく学校に向かった。



学校が終わるまでに何度かメールを送ってみたものの、返事は返ってこなかった。



ただ、暫くすると既読は付くので少しだけ安心出来た。



次の日にも返事は返ってこなかった。



私はゆいがSNSをしていたのを思い出し、急いで登録を済ませ、ゆいを探した。



するとゆいの投稿が。。。



今まで投稿していたはずのものが何も無かった。



まるで自分の存在を消すかのように思えた。。。



いっそ先輩にゆいの事を話して助けて貰うことも考えた。



でも、それで先輩がゆいの事を好きだと言ってもきっと今のゆいは納得しない。



「同情しないで」って言われたら余計に状況が悪くなってしまう気がした。。。



次の日もゆいの家に行ってみたけど、ゆいと会うことは出来なかった。



ゆいのお母さんもかなり心配していた。



あれから何も食べてないって。



その日私は先生のお手伝いをお願いされ、帰るのが少し遅くなってしまった。



すぐにゆいにメールを送って、ずっと既読が付くのを眺めていたんだけど、その日は既読がなかなか付かなかった。



嫌な感じがしてすぐにSNSのゆいの投稿を確認した。



するとそこには一言だけ。



「死にたい」と



私は慌ててゆいにコメントを書こうとした。



ところが、誰かがゆいにコメントをしているのを見付けた。



それにゆいと話をしている。



誰からのメールも返さなかったゆいが、話をしている事に驚いた。



話し方やニックネームからおそらく男の人なのは分かった。



その人の言葉はとても優しく、説得力があり、ゆいが話したくなるのも分かる気がした。



彼はゆいの話を聞いた後に、



もしそう思える位好きな人なら、最後位は自分の気持ちを伝えて。



もし彼が何も知らずに貴方が居なくなってしまったら、彼は一生幸せにはなれない。



それに結果がどうだったとしても貴方が居なくなって、彼は幸せになれると思いますか?



まずは自分の気持ちを正直に伝えて、彼にとって貴方がどんな存在かを確かめてからでも良いと思う。



後の事はそれから考えよう









私はその言葉を祈るように見つめていた。。。



するとゆいは「ありがとう」と。



それから暫くして珍しく先輩からメールが。



「ゆいがこんな時間から、話があるから家まで来れる?ってメールきたんだけど、何か聞いてる?」



私は


「ゆいの話をちゃんと聞いてあげて」


そう答えることしか出来なかった。



携帯を握りしめ、時間が経つのをただひたすら待った。



するとゆいから着信。



慌てて電話に出るとゆいは泣いていた。



「心配かけてごめんね。私もう大丈夫だから。お兄ちゃんがずっと私の側に居てくれるから」



私も気がつくと泣いていた。



ゆいは最初、先輩に何を話していいか分からなくて、コメントをくれた人のアドバイス通りに話す事にしたそうだ。



そのアドバイスは「もし言葉に詰まったり、どう伝えて良いか分からなくなったら、彼との思い出を思い出しながら話してみて。昔こんな事あったねーとか」



そしてゆいは先輩と一緒に行った場所、色んな話をした事、2人で約束したこと、色んな話をしていると自然と自分の気持ちを伝えることができたそうだ。



先輩もゆいと同じ気持ちだったけど、先輩は喧嘩っ早いし、多少強引なせいで恨まれることも多くて、それらにゆいを巻き込みたくなくて、嘘を付いていたそうです。



ただ、ゆいの気持ちを聞いて、


「俺がゆいの事を守ってやる。幸せにしてやる。だからいつまでも一緒に居よう」



そう言ってくれたそうだ。



たった4日の出来事だったのに、私にとっては一生分に感じる程長く、辛い4日間だった。



それからゆいと先輩はいつも一緒で、先輩もほとんど喧嘩もしなくなったみたい。



ゆいを取られたみたいで少し嫌だったけど、ゆいのとても幸せそうな顔を見ていると私も幸せを分けて貰えている気がした。



それに私は毎日メールをしている相手がいる。



ゆいの投稿にコメントをして、ゆいを救ってくれた彼。



どうしてもお礼が言いたくて、SNSの中でメールを送ったのがきっかけで毎日彼と話をしている。



文字だけのやり取りだけど、彼の言葉は優しく、私を優しく包みこんでくれる。



私を肯定してくれる。



そう思えた。



彼の事を好きになるのにそれ程時間はかからなかった。



彼と話をするようになってから、私はゆい以外の人とも話せるようになった。



皆から「明るくなったね」と言われるようになって、友達も沢山できた。



世界が輝いて見えた。色んな事に興味が持てて、沢山のことを知って、毎日が楽しくなった。



ゆいとはよく買い物に行く。



ゆいと居る時は彼の話しばかりしていた気がする。



服を選ぶ時も、彼はどんな服が好きなのか、もしデートするときはどんな服が良いか、そう考えながら選ぶのが楽しかった。



するとゆいは突然



「えみ。凄く可愛くなったよ。彼と出会ってから、えみはいつも笑顔で、幸せそう。えみを取られたみたいでなんか嫉妬しちゃうなー」



そう言われた私は嬉しくてゆいに抱きついた。



私は彼がもしかしたら「逢いたい」と言ってくれるかもしれないと思い、内面も見た目も素敵な人になって、彼が私のことを好きになってくれるように頑張った。



3年生になる頃には男の子に話しかけられたり、告白されるようにもなった。



ただ、どうしても彼以外の男の人とは話す気にはなれなかった。



それから私とゆいは同じ高校に入学。



高校に入ってからも友達が沢山できた。



ただ彼との進展は全くなかった。



彼は私の本当の名前も聞いてこない。



何か私も聞いちゃダメみたいな雰囲気だった。



この頃から私は自分から「逢いたい」と言ってしまおうか悩んでいた。



ただもし断られたら。



そう思うと怖くて言い出せなかった。



一年ももうすぐ終わる頃、私は彼の事を知る事になる。



そのきっかけはゆいだった。






いつものように、ゆいと学校に向かって歩いている時の事。



「私彼が何処の誰なのか分かったかもしれない」



ゆいが突然そんな事を言い出した。



私は突然の事に頭の中は?でいっぱいで、誰の事を言ってるのか全く理解出来ませんでした。



そんな私を見たゆいが、


「えみがいっつもメールしてる彼だよ。今日昼休みに私のクラスに来て。その時教えるから。じゃあ後でねー」



ゆいは行ってしまった。




突然の事に私は考える事ができなくなってしまった。



授業中もゆいの言っていた言葉がずっと頭の中から離れなくて、お昼まで何して過ごしていたのかも分からない位だった。



そしてお昼休みにゆいのクラスに。



するとゆいは「知りたい?」と言いながら楽しそうにしています。



この時私は初めてゆいの意地悪な顔を見た気がしました。




「知りたい。でも本当に彼なの?」



「じゃあ今彼にメールしてみて。内容は何でも良いからさ」



と言われ、彼にメール。



するとゆいがニヤニヤしながらこっちを見ています。



やっぱり私は?でいっぱい。



すると彼から返信が。



私は訳が分からないからえみを見るが、ただ笑っている。



「どう言うこと?」



「分からないかなー?じゃあもう一回送ってみて」




ゆいの言っている意味も分からずとにかく彼に返信。



訳が分からないのでゆいを見てみる。



「ほら。分からないかなー?」



と言いながらこっちを見ている。



「もう、いい加減教えて。どういう事?」



「怒らないでー。実はさ、えみがこのクラスに来ている時に彼にメールをすると、毎回同じ着信音が聞こえてくるのに気が付いたんだよねー」



そう言われて私の鼓動は早くなった。



「でもそれだけで彼とは限らないでしょ?大体休み時間は皆携帯触ってるんだから同じようなタイミングでなっても不思議じゃないでしょ?意味分かんないよ」



そう言いながら私は動揺していた。期待していた。もしかしたら。。。



「確かめる事は出来るよ。彼と昨日話してた事、今友達に話してみてって頼んでみて。もし全く同じ内容を同じクラスの人が話していたら確実でしょ?」



私は心臓の音が周りに聞こえるんじゃないかと思うほど緊張していた。



手が震えて上手く文字が打てない。



昨日彼に話した内容を友達に話して欲しいと頼んでみた不自然なお願いだから聞いてくれないかもしれない。



少し落ち着き、手の震えも止まっていた。



すると彼から返事が。



「分かったー♫今聞いてみるから少し待っててー」



その瞬間私は何だか急に全身に上手く力が入らなくなり寒気に襲われ、手も足も震えていた。期待していなかったはずなのに。。。



そしてクラスの一人の男の子が話している声が聞こえてくる。



「そう言えば俺の友達が昨日カラオケいって、うどん頼んだらラーメン来たらしくて、間違いを指摘したら店員が舌打ちしてきたらしいんだけど、お前達ならどうする?」



私は途中から上手く呼吸が出来なくて、苦しくて、するとゆいが教室から連れ出してくれた。



私達は皆で相談してどうやって話しかけたら良いか話し合った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




俺は中学生の頃、仲の良いグループ等がはっきりしてきた頃、特に特定の人と仲良くすることも無かった。



決して独りだった訳ではなく、色々な人と話はするがあまり深く関わろうとはしなかった。


あまり特定の人と深く関わると面倒な事に巻き込まれるのも嫌だったし、グループ特有のルールみたいなのが苦手だった。



ただ独りは寂しいので色々な人と話をすることである程度の距離を保ちながら友達を増やしていた。



恋愛の方は告白されれば断る理由も無かったので付き合いはしたものの、女の子が少し苦手で積極的な方じゃ無かったのであまり長くは続かなかった。



特に変わった出来事も無く無事高校に入学。



入学式の後に友人達が女の子の話をしていた。



「なぁ、2組のえみって子見たか?」



「見た見た。スゲー可愛かったな。あの可愛さはヤバい」



みたいな話をしていた。



ただでさえ女の子と話をするのが苦手なので、そんな人と関わる事もないと思っていたので正直この話題はどうでもよかった。



それから沢山の男達が告白し、フラれるという話を何度も聞いていた。



皆どんな人が彼女のハートを奪うのか?と言う話を永遠としていた。



するとある日突然友人が



「俺もえみちゃんに告白する」



そう言い出した。



皆で止めたけど意思は固く結局皆で応援することになった。



放課後にえみと待ち合わせをし、そこで「友達になってください」と言う作戦だ。



なぜ友達かと言うと、えみは全ての告白を断るどころか男とまともに話をしている姿を誰も見たことが無かったから。



えみと同じ中学だった人から聞いた話でも彼氏どころか男とまともに話をしているのを見たことが無いとの事。



なのでハードルを下げ友達になると言う目標に変わった。



そして待ち合わせ場所にえみが現れ、我々は隠れて友人の勇姿を見守る形に。



そして友人が意を決して



「えみさんの事が好きです。まずはお友達になってもらえませんか?」



「私恋愛とかに興味ないので。それに男の人の友達も必要ないので」



と言い放ち、すぐに帰ってしまった。



隠れて見ていた皆で友人の元に向かい「あれは無理だな」「誰が告白しようが結果は変わらないな」と慰めてその日は解散。



正直見ていたこっちも恐い位ズバッと切られたので、誰とも付き合う気がない事がハッキリと伝わった。



それから勇敢な勇者は少なくなり、男達の話題にもえみの話が出てくる回数も少なくなっていた。



一方えみはと言うと、女の子には凄く優しくハキハキしていて頭も良いので友達も多くえみの親衛隊みたいなものまで出来る位女の子にも人気があった。



その後は特に変わった事もなく、2年に進級した時に事件が起こった。



えみと同じクラスになったんだが、進級して暫くたったある日、突然後ろから女の子の声で「まさき君」と声をかけられた。



女の子で仲の良い子は居なかったので誰だろ?って思いながら振り替えると、そこにはえみが笑顔で立っていた。



俺は一瞬考え、周りを見渡してみたが近くに居る女の子はえみしか居ない。



もしかしたら幻聴だったか、気のせいだったかと思い、



「あ、ごめん誰かに呼ばれた気がしたけど気のせいだったかも」



そう言いながら席に座ろうとした。



「私が呼んだんだけどー」



少し不機嫌そうな顔をしてそう言われた。



周りを見てみると皆静かにこちらを注目していた。



俺はとにかくこの注目の中心に居たくなかったので、とにかく早く話を済ませて、平穏な日常に戻ろう。そう決意した。



「要件は何ですか?」



強張りながらも簡潔に聞いた。



するとえみは僕の顔を見ながらこう言った。



「私と友達になってくれませんか?」



周りからは「えーーーー?」と声が聞こえてきた。



その瞬間、俺の平穏な生活が終わってしまった。



そして何故。



そう思った。



暫く俺は固まっていた。



「ダメかな?」



そう言われても訳が分からない。



だから疑問をぶつけてみる事に。



「どうして俺なんですか?前にえみさんが男の友達はいらないって言ってたって話を聞いた事があるんだけど」



「まさき君って友達多いでしょ?よくいろんな人と話してるのみてて、友達になって、色々話聞いてみたいと思ったから」



そう言われても俺は困る。そう思ったが言えないし、上手く断る理由も見つからない。



「あ、そうなんですね。じゃあこれから宜しくお願いします」



そう答えておいた。



するとえみは満面の笑みで。



「ありがとう」



あまりの可愛さと、周りから注目されている恥ずかしさから自分の顔が赤くなっているのがわかった。



さすがに恥ずかしすぎるので「うん」とだけ伝えて席に座るとえみが俺の前の席に腰かけた。



すると「友達になったんだから連絡先交換しよう」と言ってきた。



取り敢えず交換した。



その時あまりにも緊張していて、手が震えていたと思う。



その時休み時間の終わりのチャイムがなりえみは「学校終わったら連絡するからちゃんと返事返してね」と言いながら席に戻って行った。



あまりにも突然の大事件にクラス全員がそわそわしていた。



早く誰かに話したいみたいな雰囲気が伝わってきた。



一方えみはいつもと変わらないように見えた。



俺はパニック状態で完全に思考停止していて授業の内容も全く覚えていなかった。



すると授業が終わり先生が教室から出たとたんに男子は俺の元に、女子はえみの元に集まってきた。



男達は皆「これは一体どうゆう事だ」「一体何をしたんだ」等の質問攻め。



俺は全ての質問に「俺にもわからない」としか言えなかった。



そして放課後はとにかく学校から早く退散したかったので誰かに話しかけられる前に急いで帰宅した。



部屋に入るといつもの自分の部屋。いつもあまり目立たないようにしてきたのに、どうしてこんな事に。。。



それから暫くは何も考えられずただ横になっていた。



どれくらいの時間が経ったのだろう。携帯の着信が鳴り見てみるとえみからメールが。



「友達になってくれてありがとう。これから宜しくね。突然皆の前で話しかけたせいで迷惑かけてたらごめんなさい」



俺は普段のえみとこのメールの内容と俺に声をかけてきた時の印象があまりにも違うので更に困惑していた。



普段のえみはいつも堂々としていて、優しい反面厳しい言い方をする事もあるし、しっかりと自分の意思を持っているカッコいい女の子とゆうイメージ。



一方話しかけてきた時やメールの印象は普通の女の子だったからだ。



何通かやり取りしていたら気がついたら眠っていた。。。



結構早い時間に寝てしまったせいで早く起きてしまった。



取り敢えず学校に行く準備をしているとえみからメール。



「朝だよー。早く起きろー」



まぁ既に起きてるよ。



もう起きていて、もうすぐ家から出ることを伝えて学校に向かった。



学校に向かって歩いていると「まさき君おはよー」と後ろから声が。



振り替えるとやはりえみだった。



えみの周りには親衛隊みたいな女の子達が。



正直えみの周りの女の子達からは絶対嫌われてると思っていた。



「せっかくだから一緒に行こー」



突然そんな事言われて咄嗟に周りを見てみる。



すると意外にも皆笑顔だった。



「行こう。行こう」



これは断れないやつだ。



仕方なく一緒に登校することになったんだが、周りからの視線が痛い。



皆ひそひそしながらこっちを見ている。



するとえみの友達達が俺に話しかけてきた。



「気にしない、気にしない。そのうち慣れるって」



散々慰められながら、えみと並んで学校へ。



教室に入り自分の席に向かって歩いていると何故かえみも俺の机の方に。



えみの机は反対側の端なので何故?とは思いながらも自分の机へ。



すると俺の前の席の女の子に話しかけた。



「ゆいー、私と席交換出来ないかなー?お願い」



俺は、おいおい、さすがにまずいだろ。って心の中で突っ込んだ。



ところがその子は笑顔だった。



「勿論良いよー。早く仲良くなれると良いね」



そう言って席を交換した。



俺の周りはえみとその友達達が集まってきた。



俺から詳しい話を聞きたがっていた男達は泣く泣く退散。



それからえみの話しを聞いていると、席を譲ってくれたゆいは幼なじみで、一番なかが良いらしい。



そしてえみと、その友達達が遊びに行く話をしていた。



俺はただ何となくで聞いていた。



「まーさーも一緒に行こう?」



一瞬誰の事?っと思ったけど、明らかに俺に聞いている。



理解した瞬間かなり恥ずかしくなった。



「恥ずかしいからその呼び方はちょっと・・・」



「えー。友達なんだから良いじゃん?」



と言いながら軽くオデコをつついてきた。



「痛い・・・」



俺は思わずそう言っていた。



「これだけで痛い訳ないじゃん」



と笑顔でまたつつかれた。



「心が痛い」



恥ずかしさのあまり、思わずそう言っていた。



すると女の子達は全員爆笑。



こんな事言うと思わなかったと永遠と話のネタにされていた。



あまりにも日常が突然変わりすぎたので、仲の良い友達に相談する事にした。



その友達は顔も本当の名前も知らない。



ネットの中だけの関わり。ある人の投稿にコメントした事がきっかけで仲良くなったのだ。



普段は人とあまり深く関わらないようにしていたけど、ネットの中では自分の事も相手の事も分からない。



だからこそ素の自分で話すことができた。



彼女の前では素のままの自分で居られて、そしてそれを受け入れてくれる。



何より話していて楽しかった。



そして俺に起こった出来事を話し、どう対応して良いか分からない等色々話した。



すると彼女は「相手が頑張って仲良くなろうとしてくれているのなら、あなたも真剣に向き合うべき。ましてや異性との関わりが無かった女の子ならとても勇気がいったと思う。だからそのままの貴方で接してみたら?そうじゃないと相手が可哀想だよ」と返ってきた。



まさしくその通りだ。



俺はは特に女の子に対して積極的になれず、話かけられても避けるようにしていた。



だからこんな俺に声を掛けてくれて、頑張って仲良くなろうとしてくれてる相手に悩む必要は無い。そう思った。



「何か吹っ切れた。ありがとう」と返事をした。



やっぱり彼女に相談して良かった。



それから暫くして、周りの友人達は意外にもからかったりせず「お前に託す」「頑張れよ」等皆で応援するようになっていた。



えみは俺を色んな所に連れ出してくれて、色んな話をしてくれた。



気がついたら俺の中の心の壁も無くなっていた。



ただ不思議だったのが、これだけ目立つ女の子と仲良くしていたら、嫉妬や恨みを買って被害を受ける覚悟をしていたのに、何も起こる事はなかった。



えみと話す時は出来るだけ素直な自分で話すようにしていた。



真剣に向き合ってくれる相手には正直に話す事が出来た。



ただひとつを除いて。。。










3年に進級した頃、ネットの友人から返事が返って来なくなっていた。



俺はその彼女のことが好きだった。



ただ文字だけのやり取りだけど、それでも確かに繋がっている気がしていたからそれだけで良かった。



でももしこのまま繋がりが無くなってしまったら。。。



そう思うと凄く後悔した。



俺は彼女の事が好きと思いながらも何もしていない。



何処に居るかも、名前も知らない。



もしかしたらこのまま一生出会うことも無いかもしれない。。。



誰にも相談することが出来なかった。



文字だけのやり取りしかしていない相手を好きになったと言うのが恥ずかしかったから。



それにきっと誰も理解してくれないと・・・



「まーさー」



「まーさー?」



「あ、ごめん。考え事してて聞いて無かった」



そう答えるとえみが心配そうにこちらを見ている。



「何か悩んでるなら私で良ければ話してくれないかな?もしかしたら何か力になれるかもしれないし。それに元気のないまーさーを見てると辛いよ」



「そうだね。心配させてごめん」



そう言って俺は彼女の話をえみに伝えた。



初めて素直になれた事、いつも優しくてどんな話も真剣に聞いてくれて、そして俺と言う人間を認めてくれて、良い所も悪い所も全て受け入れてくれたこと。。。



どれ位の時間話しただろう。話せば話す程、彼女と話した言葉が頭の中に溢れてくる・・・



「本当にその子の事が好きで、大好きで、大切だったんだね」



えみにそう言われて、溢れてくる涙を堪える事が出来なかった・・・



えみは「ごめんね」と言いながら俺を優しく抱き締めてくれた。



どうしてえみは俺にこんなに優しくしてくれるのだろう・・・



そう思っていると、えみが小さな声で震えながら「エミリアでしょ」と。。。



俺はその言葉を聞いた瞬間、止めどなく溢れていた涙が止まった。



何故えみが彼女のアカウントの名前を。。。



すると俺の肩に大粒の涙が流れて来るのが分かった。



「私なんです。今まで黙っててごめんなさい。どうしても恐くて言い出せなくて。本当にごめんなさい。。。」



「えみが。。。エミリア?」



そう聞くとえみは小さく頷いた。



えみは少しずつ落ち着きを取り戻し、そして全てを話してくれた。。。



最後まで読んでくれてありがとうございます。



END

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