プロテイン食ってみた

御角

結論:まあ、それなりに美味しい

 私は悩んでいた。筋肉というシンプルなお題で一体何を書くべきか。一番によく思いつきそうなのはコメディだろう。実際、筋肉の力であらゆる困難を乗り越え、状況を無理やり打破する話は星の数ほどあるし、作者的にも作りやすい。

 あるいは恋愛か。主人公がぽっちゃりだろうがガリガリだろうが、はたまたムキムキだろうが、マッチョとの恋物語というだけで話はいくらでも広がりそうである。

 いや、SFもいい。筋肉至上主義の社会か、もしくは筋肉の存在が無駄なものとして消えていく世界か。

 悩みに悩みぬいた末、私は一つの結論を導き出した。


 正直、どれも面倒臭い。というよりも、今からヤマやらオチやらを考えて、それを文に起こしても間に合わない。そもそも小説という形で話を作り出すことすら億劫である。

 よって私は第三の選択肢として、「なんか書くの楽そうだしヤマもオチも別にいらないのでは(偏見)」という安易な考えから、こうして初めてエッセイジャンルを選択し、つらつらと駄文をつづっているというわけである。


 というわけで、考えていた小説を削除してから一時間後、私は夜のドラッグストアに繰り出し、早速プロテイン一袋を購入してきた。筋肉といえばプロテイン。もしくはささみ。つくづく安直な作者である。

 開封すると、ほのかにカカオの香りが室内に広がった。チョコレート味の表記は伊達じゃないらしい。

 試しに一口、すくって口に含んでみた。速攻でむせた。その口蓋こうがいにまとわりつく細やかさは、ビンラムネの中身を気管支に取り込んでしまった幼少期を彷彿とさせる。

 プロテイン側も、そんな私を呆れたように見つめていたに違いない。こいつは何をやっているんだ、飲み方を知っているにも関わらず、わざとおふざけを入れようとした罰だ、と。

 気を取り直して、ついてきたシェーカーに粉を三すくいほど加え、水を流し入れてバーテンダーよろしく振ってみた。蓋の閉まりが甘かったのか若干飛び散ったが、さして問題はない。元々汚い部屋に、タンパク質のシミが一つ増えたまでである。

 ゲームの動画などを見ながら片手間にシェイクし続けていたら、いつの間にか中身がほぼ泡と化していた。そのまま放置して動画をひたすらに見漁る。泡はすっかり消滅した。なぜかプロテインを作るだけで一時間余りかかっているが、こうして準備は整った。

 いや、ちょっと待て。せっかくプロテインを飲むなら筋トレをしたほうがいいだろう。スクワットを一回、二回……常温のプロテインをおもむろに胃へと流し込んで、またスクワットを三回、四回……。


 結論。プロテインはまあまあ、そこそこ美味しかった。無限に飲めると言えば嘘になるが、差し出されれば何の抵抗もなく飲める味。それ以上でも以下でもない。

 ちなみに、スクワット後、倒れるように就寝し、目を覚ました私に待ち受けていたのは、甘い香りを放つシェイカーと洗剤との格闘であった。微妙にサイズが大きく、スポンジのみで洗うのには向かないのが中々腹立たしい。あと底に溶け残ったプロテインを見てしまうと妙に悔しい。私のバーテンシェイクの何がいけなかったというのか。

 なお、残った約一袋分のプロテインは、冷凍庫にぶち込んでおいた。冬眠から目覚める日は果たして訪れるのか。それは、私の筋肉のみぞ知るところである。


 余談だが、プロテインをがぶ飲みした翌朝に体重を測ってみたら普通に一キロ増えていた。健康的とはいえ、プロテインにもカロリーはある。何事も、やり過ぎは禁物である。

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プロテイン食ってみた 御角 @3kad0

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